(212)平和を祈り続けて~渡辺えりの ちょっとブレーク|山形新聞

渡辺えりの ちょっとブレーク

(212)平和を祈り続けて

2023/1/30 17:17

 このたび、山新3P賞の平和賞をいただくことになりました。

 父が生きていたら本当に喜んでくれたと思う。

 父は戦時中の少年時代、軍需工場で戦闘機「はやぶさ」のエンジンを作っていた。B29の爆撃から奇跡的に逃れて山形に帰る時、180度変化した価値観の中で「教育とはなんだろう?」と疑問に思ったという。アジアを解放するための正義の戦いだと信じた戦争の結果にがくぜんとし、教育の現場で教育の意味を問いたいと、独学で山形大に入学して教員になった。百姓に学問はいらないと言われていた時代に、農協に勤めながらお金をためて村で初めて大学に入り、生徒たちを育ててきた父の平和への祈りを受け継いできたつもりでいる。

 父は、自分が進路の相談に乗り助言したために軍需工場での部署が変わり、爆撃で死んだ親友をずっと思い続けてきた。6年前にようやく親友のお墓を見つけて2人でお参りした。平和活動で知り合った方が、宮沢賢治の親友・保阪家内の実家の近くで奇跡的に見つけてくれた。19歳で亡くなった親友への思いがあふれた父の顔が忘れられない。お墓を見つけられたのも、両親やシベリアに抑留された伯父の体験談を聞いて育ったためであった。

 演劇をやるために東京に出て、さまざまなアルバイトをしながら、多くの方々に助けられながら、今日まで続けてこられた。観客の皆さんの笑顔が見たくて続けてきた。その笑顔は、平和でなくては見られない。平和でなければ、劇場に足を運んでもらえない。そして、戦禍では演劇、映画、音楽が規制され、鑑賞することもできない。すべてのアートは、平和への祈りだと感じてきた。

 1、2月は、舞台「老後の資金がありません」の再演でお客さまに笑いと涙を届けている。特に年配のお客さまは身につまされるらしく、マスクの下で大笑いして泣いているのが舞台上からも見える。

 また、3月5日に平和賞受賞を記念し、山形市の東ソーアリーナで反骨の音楽タンゴと劇中歌のコンサートを開催する。タンゴダンサーも出演し、見ごたえのあるものになると思う。ピアソラの曲にすべて私が日本語で歌詞を付けた。

 また、11月23日には同市のやまぎん県民ホールで、長年の夢だった「ガラスの動物園」の演出と出演の夢がかなう。「消えなさいローラ」との2本立て。これも反戦、平和への祈りがテーマの作品だ。

 16歳の夢が、68歳でかなう。これも故郷の皆さんの応援のお陰だ。

 今、山形に住む家族以外に家族もなく1人で寂しい日々ではあるが、私や私の作る作品を応援してくださる皆さんが支えになっている。さまざまな犠牲も強いられる大変な仕事だが、皆さんの笑顔のために今後も頑張りたい。今回いただいた賞は、並々ならぬ苦労で戦前戦中戦後を乗り越えてきた両親と戦禍をくぐり抜けた方、亡くなった多くの方たちの心にささげたいと思う。

 ありがとうございました。

(俳優・劇作家、山形市出身)

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