渡辺えりの ちょっとブレーク

(195)変わらぬ夢、重ねた年齢

2021/8/31 10:43

 ただ今、東京・新橋演舞場にて喜劇「老後の資金がありません」の本番中です。東京は26日まで、この後9月1日から14日まで大阪松竹座で上演します。

 コロナ禍、客席は半分に減らされ、花道を使う演出もなくなってしまいましたが、東京公演のチケットは完売。お客さまはマスクをして大笑いしたり泣いたり。こちらも老体にむち打って頑張っているので、舞台はまさにお客さまとのコラボレーションでできています。

 高畑淳子さんもまっしぐらの明るい性格。演劇好きの魂が光ってます。その夫役のパン屋の主人宇梶剛士さんもいい味を出し、私の夫役の羽場裕一さんも見えっ張りでぼーっとした演技で客席を沸かせています。

 そして、長谷川一夫さんの娘さんの稀世さんが、上品で芯のしっかりした温かいおしゅうとめさんを好演。舞台の上でも普段も大好きになりました。本当に頼りがいのあるすてきな方です。目が長谷川一夫さんにそっくり。思わず見つめてしまいます。75歳とは思えぬ滑舌の良さと機敏な動きです。

 私も高畑さんも66歳。歌って踊って激しい動きの毎日です。体中が痛み、治療に行きながら50歳の主婦を演じています。

 夫婦そろってリストラされて老後の貯金が300万円しかなくなってしまった夫婦の喜悲劇ですが、観客の皆さんは大笑いしながらも人ごとではないと思っている様子。

 私自身、これからどうやって生活していくのか? ついつい考え、悩んでしまいます。私の母も心配性でしたが、その血を受け継いだようです。好きなことだけしてのんびり暮らしていきたい。そう思っても、最低限の暮らしができるお金がないと無理ですよね?

 私には、私自身が助けられたように、国の政策のために犠牲となった市井の弱者や少数の恵まれない方たちに、夢と希望を与えられるような映画や舞台を作りたいという16歳からの夢があります。上京したての18歳のころと同じ夢を持ち、事務所を立ち上げて再スタートしようとしていますが、あの時と全く違っていることがあったのです。

 それは年齢。あのころは水だけ飲んでも3日間は生きていられたし、アルバイト先のリーダーたちがごちそうしてくれたし、体はきびきび動き、しょっちゅう引っ越しの手伝いなんかもできたし、アルバイトも1日に三つはできた。頭の回転も速かった。

 何か一つのことをやると、前にやろうとしていたことをすっかり忘れてしまうなんてことになるとは。

 16歳のころ、山形県民会館で「ガラスの動物園」を見て演劇を志し現在66歳。50年たったんだなあと、つくづく思います。50年たつと人は年を取りますね。

 16歳では感じなかった腰の痛みに耐えながら、歌って踊っています。70歳までに「ガラスの動物園」をやりたいです。県民会館で上演できるように応援してくださいね。

(俳優・劇作家、山形市出身)

[PR]
[PR]