(46)私が、神様からの贈り物?~渡辺えりの ちょっとブレーク|山形新聞

渡辺えりの ちょっとブレーク

(46)私が、神様からの贈り物?

2008/10/20 17:30

 16日に山形テレビ(YTS)で連続ドラマ「小児救命」が始まった。

 私の役は、主人公の青山宇宙(そら)という名の若い医師を見守りながら、陰で支えるベテランの医師赤池小夜子である。

 主人公の宇宙を演じる小西真奈美さんは長身でスラリとした美人で、顔が私の半分くらいの大きさの小顔である。都会的でクールな役が多い彼女だが、実際は気さくで笑顔の可愛(かわい)い、芯の強い人である。

 鹿児島のかなりの田舎で生まれ育ったらしく、夏になるとうるさいくらいのホタルが飛んでいたという。辺りは温泉だらけで、地元の人は家でお風呂に入るより近くの温泉にしょっちゅう入っていた。小西さんは東京に来たばかりのころ、どうしてみんなわざわざお金を払って温泉旅行に行くのか理解できなかった。そして、故郷の豊かな自然がどれほど大事だったか、自分がどれほど恵まれて育ったのか、東京に出てくるまでは分からなかったと言い、今は故郷にとても感謝しているという。

 小西さんとは20歳くらい年が離れているというのに、幼時体験も故郷に対する思いも、とても似ていた。若いのに軽くない彼女の発言や筋の通った考え、謙虚さなどは、時代を超えた故郷の土地の遺伝子から来るものなのかもしれない。

 「小児救命」のモデルになった横浜の小児クリニックの加藤ユカリ先生が、先日スタジオに見学にいらした。ご主人と3人のお子さんも一緒だった。コンビニのように24時間いつでも誰でもかかることのできる病院にしたいと、先生は初めご主人と交代で12時間体制から始めたという。あまりにハードなシフトに、周りから理解も得られず、孤軍奮闘で随分ご苦労なさったようである。

 人手不足やいろいろな事情で、患者が病院を盥(たらい)回しにされたあげくに亡くなってしまうような悲しい出来事が多い中、加藤先生の子供たちに対する愛情や正義感は素晴らしい。しかし、そんな考えがなかなか通らなくなってしまった現代の価値観があり、それらと長い間戦い続けた成果が今徐々に生まれつつあるようである。

 加藤先生が私の演技を見て、こうおっしゃった。「渡辺さんは神様からの贈り物ですね」。私はどういうことかと、初めは首をかしげてしまったが、こういうことだった。加藤先生はご自身と小西さん演じる青山宇宙を重ねていらして、そんな宇宙を厳しく指導しながらも見守り続け、陰で協力を惜しまない赤池小夜子医師を、宇宙にとって「神様からの贈り物」だとおっしゃったのだった。それほど先生の医療の現場は大変だったのである。

 目に涙をためておっしゃる加藤先生の思いを受けて、私も泣いてしまった。その時、ハードな撮影でも私はこの先生のためにも頑張ろうと決意したのだった。

(劇作家・女優、山形市出身)

[PR]
[PR]