(48)カーテンコールは花笠音頭~渡辺えりの ちょっとブレーク|山形新聞

渡辺えりの ちょっとブレーク

(48)カーテンコールは花笠音頭

2008/12/22 17:28

 東京・青山のスパイラルホールで、17日から「渡辺えりのマイ・ルーム」というコンサートが始まった。ドラマの撮影やバラエティー番組の収録の合間に家で練習し、準備したのだが、久しぶりということと、ほとんどが新曲ということで、今までになく緊張してしまった。

 ジュリーの「ストリッパー」で幕を開け、ピンクレディーの「UFO」と続く。もちろん振り付きである。お客さまは大笑いだが、私は息切れがひどく、治まるまで次の歌が歌えなくなってしまう。16日の舞台稽古(げいこ)から初日まで連日2回ずつ通していたため、腰も痛み精神もクタクタで、初日に大勢のお客さまの顔を見たら、歌詞が飛んでしまう場面もあった。

 スパイラルホールは小劇場で、しかも今回は「私の家」という設定のため舞台を低く作り、本当に目の前に客がいるようにセットが組まれている。誰が来ているのか全部顔が分かってしまう。「あっ!浅丘ルリ子さんだ」と思った瞬間に歌詞を忘れてしまうのである。昨日は初日だったので、友人、知人がかなり多く、カーテンコールで「花笠音頭」を歌ったら、「もっと」という多くの声があり、予定していなかった「ボン・ボヤージュ」を急遽(きゅうきょ)、歌ってしまった。曲を知らなかったというバンドリーダーも即興で演奏してくれた。何が起きるか分からないコンサートで、スタッフも仕事を忘れて笑ってしまったという。

 1部が日本の歌謡曲、2部は外国のポップスで、歌詞は日本語で私が訳した作品と演出の鈴木勝秀さんが訳した作品である。短い稽古期間だったが、最後まで粘った。2部のキャロル・キングの「私の友達」とエリック・カルメンの「オール・バイ・マイセルフ」は、実際の、亡くなってしまった私の山形の友人をイメージして、かなりの工夫が凝らしてある。今度山形でコンサートをする時にぜひ聞いていただきたい。

 スパイラルホールは25年近く前にできた多目的ホール。そのこけら落としの「マック・ザ・ナイフ」に私が出演しているのである。当時は劇団3○○でバリバリに活動しており、商業的な公演には出たくないといきがっていたころであったが、演出の佐藤信さんの強い勧誘で出演することになった。斎藤晴彦さんの女房役のピーチャム夫人役で、主役のマックは林隆三さん。ポリーは毬谷友子さん。毬谷さんは宝塚を退団後の初出演で、私と5つしか年が違わないのに私の娘役だった。

 昨日本番中にお客さんの1人に「若さの秘訣(ひけつ)は何ですか?」という質問があった。意表を突く質問だった。考えてみれば「マック・ザ・ナイフ」の時も29歳で25歳の女優の母親役。森光子さんや浅丘ルリ子さんの同級生役、さらに八千草薫さんのばあや役。小学校の学芸会デビューも「犬のお母さん」と老け役ばっかりやってきて、実年齢より若い役をやるようになったのは最近である。若さの秘訣は「早く老けること」と言ったら、大爆笑だった。コンサートは23日まで続く。疲れても愚痴は言うまい。

 12月3日に東京ドームで開催された沢田研二さんのコンサート「人間60年 ジュリー祭り」で80曲を6時間40分かけて歌った、あの沢田さんのパワー。あれを思って乗り切りたい。休憩がたったの1回、しかも15分で、舞台の端から端まで駆け回りながら歌っていた。

 私はまだ53歳。これからである。

(劇作家・女優、山形市出身)

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