渡辺えりの ちょっとブレーク

(98)忙しい日々

2013/5/30 16:04

 4月の舞台「根っこ」が終わってから、5月4、5日と母校山形西高の先輩や友人に頼まれたシャンソンライブで歌った。さらに、NHKの連続テレビ小説「あまちゃん」と映画撮影の間を縫いながら、6月放送予定のテレビ番組「朝だ!生です旅サラダ」の収録で10日から3日間、山形市の素敵(すてき)なお店や東根市のサクランボ、金山町の蔵の喫茶店、美しい庭を望むレストランなどをいろいろと紹介させていただいた。ほとんどの場所が弟のお嫁さんに教えてもらった場所である。

 車の免許を持っていれば、山形では東京で絶対に体験できない不思議で面白い場所に遭遇できる。狸森焙煎(むじなもりばいせん)所(上山市)という喫茶店では店の前に2匹のカモシカが現れ、木々の間の餌をうまそうに食べていた。東根で食べた温室育ちの「佐藤錦」の甘さも忘れられない。山形の農家は昔から真面目で勤勉だ。100年前は酸味が強くて食べられなかったサクランボをこんなに甘くて美しい宝石に変えてしまった。

 山形の後、岩手県花巻市に滞在し、高村光太郎をしのぶ「高村祭」で講演してきた。2000年5月15日に、父が依頼されて光太郎のことを講演した。大沢温泉の光太郎が泊まった部屋に講師は泊まることができるのだが、私もその時に父と一緒に泊まることができてとても感激したのを覚えている。今でもその部屋の床の間には父が書いた色紙が飾られている。

 13年経(た)って娘の私が講師を務め、父と並んで色紙が飾られることになった。講演当日の15日は、光太郎が暮らしていた山荘前の広場に600人以上が集まって話を聞いてくれた。かつて光太郎も見たであろう、地元の方たちの歌や踊りも披露された。宮沢賢治の弟清六のお孫さんもいらしていた。私も父の光太郎への思いと、私が戯曲「月にぬれた手」を書き上げた思いなどを1時間にまとめて語らせていただいた。

 翌16日は花巻市文化会館での講演だったが、この日は宮沢賢治のことを話そうと思っていた。ところが、会場の掲示板を見たら「高村光太郎生誕130周年記念講演」とある。昨年花巻で行った講演の内容を話すものと思い込んでいた。昨年の講演が好評で、その時に参加できなかった方たちから、ぜひその時の話をと依頼されたからだった。講演を始めてからテーマの違いに気がついて大いに焦り、散漫な話になったようで反省した。しかし、お客さまは千人以上入り、立ち見も出て、別室でテレビ画面で見ることになった方たちもいたという。

 業務用クリーニングの会社の50周年記念講演を依頼され、17日は会場の山形市内のホテルに急いだ。花巻から仙台に行って美容院で髪形を整え、8月の新作の仙台公演の取材を受けた後、高速バスで山形まで向かったのだった。高速バスは満員だった。講演後、山形の記者さんたちに集まっていただき、8月にシベールアリーナで上演する舞台「あかい壁の家」の取材をしてもらったのである。

(劇作家・女優、山形市出身)

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