渡辺えりの ちょっとブレーク

(108)充実のウィーン

2014/4/16 15:17

 3月中旬に突然1週間の休みができたので、子供の頃から行ってみたかったオーストリアのウィーンに行って来た。音楽の都ウィーン。山形六小、そして山形六中の音楽の授業で習ってからずっと憧れていた。それにNHKアーカイブス特集で見た「女帝マリア・テレジア」も面白く、いつかいつかと思っていたので実行に移したのだった。前日ギリギリまで仕事だったので、準備する時間はない。夜中まで開いている書店でガイドブックを数冊買い、飛行機の中で読むことにした。インターネットで個人のガイドさんを探し1日だけ予約し、航空券とホテルを合わせて予約した格安会社の書類を持って成田空港を飛び立った。

 約11時間の機内だが、映画を5本見ていたらあっという間に着いてしまった。私は飛行機内で映画を見るのが大好きである。日頃忙しくて見られない映画をまとめて見ることができる。せっかくの山場にキャビンアテンダントさんに声を掛けられイライラしてしまうこともある。何を聞かれているのか分からず「ウオータープリーズ」と答えているうちに水だけが何杯も座席に溜(た)まっていく。

 機内食を食べる時だけ映画から目をそらさなければならないのが残念だ。ワインを頼んだら、あんまり美味(おい)しいので泣いてしまった。美味しくて泣ける。そんなことがあることも初めて知った。年を取ると感激屋になり涙もろくなってくる。

 5泊のウィーンの旅で4本の舞台を見た。1日目に頼んだウィーン在住の豊島さんというガイドの方に公演中の小劇場を調べてもらい、知り合いの日本人の俳優さんを紹介していただいた。オペラ座での「トスカ」はソールドアウトだったのをホテルのコンシェルジュに取ってもらった。予約したホテルに日本人のスタッフが2人いてとても助かった。ドイツ語はできず、私の英語もなかなか通じなかったのだ。

 午前中はホテルの日本料理店で働く日本人の方に紹介していただいた二期会のオペラ歌手から声楽の指導を受け、お昼から美術館に出かけ、夜は観劇というスケジュールだった。

 気がつくと、夕食を取る時間がなかった。時間がもったいなくて食べる暇がないのだ。ご飯は日本に帰ってからも食べられる。美術品や建築や、生の舞台はここでしか見られないではないか!といった心情に突き動かされた1週間だった。初日はシェーンブルン宮殿と新作ミュージカル「老婦人の来訪」観劇。2日目は美術史美術館と「オスカー」という座席が100人ほどの小劇場での観劇。3日目はベルベデーレ宮殿、夜はワンピースに着替えてオペラ「トスカ」鑑賞。4日目はシュテファン寺院とモーツァルトが「フィガロの結婚」を作曲した家の見学と、シェーンブルン宮殿の中にある人形劇の劇場での観劇。この一座の人形劇はマリア・テレジアもひいきにしていたという。演目はモーツァルト作曲の「魔笛」だった。

 今年の10月、日本の人形劇団「結城座」の380周年記念公演の演出を依頼されていたこともあり、ウィーンの糸操り人形は見ておきたかった。さすが伝統ある劇団、女性の人形師が4人だけで数十体の人形を動かしての見事な演出であった。劇場で知り合いになった日本人の若い女性画家と意気投合し、その夜初めてウィーン料理の夕食を取った。ホテルインペリアルは、ガイドブックに各国から著名人たちが食べに来ると書いてあったので間違いないだろうと2人で入った。とんかつを薄くしたようなシュニッツェルという名物料理はやはり旨(うま)かった。レディー・ガガがウィーンにわざわざ食べに来るというので有名になった料理らしい。

 その翌日飛行機に乗り、また映画を5本見て、帰国した。

 美術館が素晴らしく、1日6時間歩き、晩ご飯を食べずにいたら3キロ痩せた。しかし、自分で勝手に忙しくしてしまったせいで、休みが休みにならなかった。勉強になり充実した日々だったが、1日くらい家でゆっくり寝ていれば良かった、と筋肉痛の身体(からだ)をさすりながら思う。

(劇作家・女優、山形市出身)

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