渡辺えりの ちょっとブレーク

(113)芝居漬けの日々

2014/9/29 15:14

 幸せなことだが、今月は同時に2本の舞台の作・演出をしている。昼頃から午後4時までがおふぃす3○○の「天使猫」の稽古。午後5時から10時までが江戸糸操り人形「結城座」の「オールドリフレイン」の稽古である。

 9、10、11の3カ月、芝居漬けの日々になる。

 「オールドリフレイン」は1987(昭和62)年と2005年に上演された作品で、中村勘三郎さんが大絶賛してくださった作品である。新宿の「モリエール」という小劇場で初演した時、ドラマで共演中の勘九郎さん(当時)が見に来てくれたのだ。これをきっかけに親友になったともいえる作品である。尾崎翠の「第七官界彷徨(ほうこう)」という小説を当時の劇団員が面白いからと手渡してくれたのがきっかけだった。

 大正時代にこんなシュールな作品を書いたのかと驚くほどに斬新な作品だが、作者は病気のために使った薬の中毒になって精神に異常をきたし、志半ばにして故郷の鳥取県に帰ることとなった。40年ほど後、「このまま死ぬのではあまりにむごすぎる」と嘆きながら病院で亡くなったという。この作者の理想とする作品「風のような空気のような煙のような世界」に大いに共鳴し、当時の自分自身の世界とだぶらせながら必死の思いで書き上げた戯曲であった。

 3度目の上演の今回は糸操りの人形が演じる。人形と同じ舞台に人間の役者も5人立つのだが、劇団四季の「キャッツ」初演の娼婦(しょうふ)猫を演じた久野綾希子さん、そして劇団3○○の旗揚げ公演に参加した菅野久夫、紺野相龍、「夜の影」再演の主演立花弘之らが私の演出する舞台に久しぶりに出演してくれる。

 文学座の新鋭鹿野真央も参加する。人形と人間のコラボも楽しみな舞台である。この舞台は10月2日から、東京杉並区の座高円寺で幕を開ける。結城座380周年記念公演である。高村光太郎もひいきにしていた劇団である。

 「天使猫」は宮沢賢治の半生を下敷きにしたファンタジーで、震災の年に書き上げ、ぜひ東北で上演したいと願った作品である。

 2万人以上の死者を出した明治の震災の年に生まれ、さらに津波の年に亡くなった賢治の精神を今こそ発掘して東北の魂を探ろうとして書いた作品だ。山形市のシベールアリーナで11月30日に上演できることになり、おかげさまで昼の回は完売、夜の回の席が若干残る程度だということで、故郷の愛に感謝感激なのである。被災した宮城県では石巻の特設テント公演と仙台公演があり、こちらはまだこれからの宣伝となる。

 福島県の南相馬市での公演も決めた。震災の時に山形市総合スポーツセンターに南相馬市の方々が大勢避難され、そこに慰問に伺うようになった時に約束したからであった。

 原発事故の後遺症はさまざまな形で今も癒えない傷となっている。スポーツセンターの被災者の体を見守る看護師たちも、南相馬市から家族と別れて派遣された方々だった。その方たちと再会し、今の様子をお聞きしたいと願っている。

(劇作家・女優、山形市出身)

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