(114)ゆかりの盛岡で初日~渡辺えりの ちょっとブレーク|山形新聞

渡辺えりの ちょっとブレーク

(114)ゆかりの盛岡で初日

2014/10/30 15:13

 宮沢賢治の生き方を描いた舞台「天使猫」の公演が始まりました。

 ゆかりの深い盛岡市の盛岡劇場で初日を迎えました。初日を東京から遠い岩手県でやるのは想像以上に大変でした。初日の前は仕込みからリハーサルまで各スタッフがかかりっきりになるものですが、通うわけにもいかず、別な仕事のある人は来られなくなります。宿泊や移動にもかなりのお金がかかります。

 公演では、お客さまは盛り上がり、賢治のエピソードにも敏感に反応し、「震災で父親を失って、自分をいつも責めていたが、この芝居を見て、思うことが大事なんだと分かり、本当に救われた」とロビーで号泣するお客さまもおられました。どんなに苦労しても盛岡でやって良かったと思った瞬間でした。

 今回の重要な役である賢治の弟清六さんの娘さんとお孫さんもいらして、たくさんの差し入れをいただきました。ご挨拶してお礼を伝えようと思いロビーで探しましたが、もうお帰りになってしまった後で、本当に残念で悔いが残ります。本当に親切にしていただき、さまざまなお話を聞かせていただきました。賢治と同じく、謙虚で相手の身になって何でも考える方々でした。

 23日からは東京のシアタートラム。地元世田谷三軒茶屋の小劇場です。おかげさまで、連日超満員のお客さまに恵まれており、11月30日の山形公演までがむしゃらに進むのみ。

 東京でも涙が止まらなかったという方が多く、賢治の精神と、震災で失ったものの大きさと、未来へ繋げる心の部分を強く感じてくださるお客さまが多いように思え、再演の意味を噛み締めているところです。

 11月1日は石巻(宮城県)のテント公演。被災した場所にテントを張ってやるのですが、宇梶剛士さんがどうしてもやりたいと自分で寄付を集めて上演する公演です。劇団椿組さんからテントをお借りし、テントを張るお手伝いも頼みます。私も生涯で初めてのテント公演。雨風には弱いテントです。晴天を祈っています。

 11月3日は兵庫県立芸術文化センター、5日は石川県の赤羽ホール。8、9日は山口情報芸術センター。11日は宮崎県の三股町文化会館。24日は愛知県の長久手市文化の家。27日は福島県の南相馬市民文化会館。28日は日立システムズホール仙台。そしていよいよ30日にシベールアリーナ(山形市)での大千秋楽です。おかげさまで2カ月前に完売になりました。

 仙台と福島がまだまだお席がございます。お知り合いがいらっしゃる方、どうぞよろしくお願いします。スタッフ、キャスト一丸となって頑張っています。

(劇作家・女優、山形市出身)

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