渡辺えりの ちょっとブレーク

(115)一生友達だよ!

2014/11/27 15:10

 舞台「天使猫」は、ただいま地方公演中です。山口県ではスタンデングオーベーションで、拍手が鳴りやまず、宮崎県でもダブルコール。お陰(かげ)さまでとても評判の高い作品となりました。30日の山形公演が本当に楽しみです。仲間たちと温泉に入りながら全公演の打ち上げをやる予定です。スタッフと出演者に山形の秋を満喫していただきたいと願っています。

 石巻市(宮城県)のテント公演は心から感動しました。宇梶剛士さんの発案で、劇団「椿(つばき)組」さんからお借りしたテントを大勢の皆さまの協力で1週間かけて海沿いの被災地に建て、11月1日に上演しました。ラスト近くに後ろのテントが開き、海が見え、そこから死者たちが帰ってくるシーンになります。

 カーテンコールで私たちは笑顔で挨拶(あいさつ)しようと決めていましたが、お客さまたちが号泣し、私の手を取ってくださいました。もう私たち出演者も号泣し、言葉に詰まってしまいました。スタッフ・キャストともにボランティアで上演した公演でしたが、その瞬間に本当にやれて良かったと一同気持ちを同じにしたのでした。

 30日の山形公演はお陰さまで完売いたしましたが、28日の仙台公演の席はまだ余裕がございます。午後7時から仙台市青年文化センターです。

 21日は新橋演舞場(東京)で上演中の中村勘三郎追善公演に、ゲストで出演しました。川口松太郎作「鶴八鶴次郎」、北條秀司作「京舞」の2本立てで、2本とも十七代、十八代勘三郎にゆかりのある作品。新派公演に勘九郎、七之助が初めて参加することでも話題になっている公演です。毎回勘三郎さんの友人らが参加し、思い出を語るコーナーがあるのです。

 生番組のテレビ「バイキング」に出演した後、演舞場に直行し大いに緊張しながら思い出を語りました。まだまだ思い出にはしたくない生々しい感情が湧きあがって来て、泣けて仕方がありませんでした。あり過ぎる思い出のどの部分を語るのか? いつも大笑いしていた勘三郎さんが喜ぶエピソードを本人のために語ろうと思ったのでした。

 芸人には未来がないからお金持ちの旦那と結婚して幸せになった方が良いと考え、愛する女性にわざと悪態をついて身を引くというストーリーの「鶴八鶴次郎」を初めて見た若い頃、私は当時勘九郎の勘三郎さんに「女性差別だ。芸を取るか結婚するかは女性自身に決めさせてよ」と怒ったのでした。そんな思い出話、小劇場の役者たちを私がたくさん紹介して、その方たちと彼は亡くなるまで友達になった話。今も夢に出て来て「なんだ死んでなかったんだ!」とホッとして起きると、やはり亡くなっているという悲しい思いをする話など。

 でもさまざまなエピソードを話しても、笑ってくれる本人がいないという寂しさから逃れられず、帰りのタクシーでも、家に帰ってからもずっと泣き通しでした。

 夜にアダム・クーパー主演のミュージカル「SINGI’N IN THE RAIN~雨に唄えば」を見ましたが、雨のシーンで踊る振り付けを勘三郎さんが「浅草パラダイス」で真似(まね)して踊ったことなどをまた思い出して、この舞台を彼が見たらどんな感想を言ったろうか?と思い、また泣けました。同世代の気の合う友人、芝居の話ばかりを何時間も喋(しゃべ)れる友人。会いたくて会いたくて仕方がなくなりました。

 「一生友達だよ! 親友だよ!」。なぜかわざわざ確認されたことが3回ありました。30代で1回、40代で1回。50代の前半で1回。彼がどうしてわざわざ念を押したのか? それを今考えているところです。

(劇作家・女優、山形市出身)

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