渡辺えりの ちょっとブレーク

(123)京都南座で初主演

2015/7/29 13:00

 7月7日から23日まで、京都南座で松竹120週記念公演「有頂天旅館」という北條秀司の作品に出演していました。南座は舞台役者なら一度は立ちたいと夢に見るような歴史のある舞台で、あの出雲阿国が初めて演じた四条河原町の舞台でもあり、400年以上の歴史を持つ、歌舞伎の発祥地でもあるのです。

 朝ドラ「ごちそうさん」でブレークしたキムラ緑子さんとのダブル主演ということで、60歳にして商業演劇初座長となった訳なのです。

 慣れない着物や所作に必死になって挑み、1カ月の稽古を重ねて南座の本番となった訳ですが、無我夢中の稽古の後、周りの方々に南座で主演するということの重さすごさを聞かされてからあらためてプレッシャーに押しつぶされそうになったのでした。しかし、作品の評判も良く、お客さまも大入りで、無事に千秋楽を迎えることができました。

 初演は1960(昭和35)年です。当時、山田五十鈴さんが演じた役を私、越路吹雪さんが演じた役をキムラ緑子さんが演じました。再演は新派で、波野久里子さんと水谷八重子さんが演じています。

 琵琶湖の湖畔の旅館が舞台で、さまざまな人間の欲が絡んだ悲喜劇、当時としては斬新な手法で、登場人物すべてが事件の容疑者であるという出だしで、そこからどんな事件が起きたのか? そして、その犯人は誰なのか? その謎を解く手法になっています。しかし、第1場ですでに詐欺師の犯人は姿を現してしまい、物語の犯人は、実際の悪人たちではないことが分かってくるのです。

 登場人物の全員に裏があり、ある意味何かしらの罪を持っているという、不思議な手法で書かれた古典ですが、その戯曲に新派の演出部で劇作家の斎藤雅文さんが新たなラストを書き加え、人情味あふれる芝居に創り上げました。斎藤さんは「おもいでぽろぽろ」を舞台化した方でもあります。

 8月の末から東京の新橋演舞場でも上演いたしますので、興味のある方はお越しください。

 京都の南座で山形出身の役者が主演したのは多分初めてだと思います。本番の幕が開いてから、最上川を介して、紅花の紅を京に送り、帰りの船で京都のおひなさまなどを持ち帰ることで交流した山形と京都の関係などに思いをはせました。

 また京都は父の祖父が寺の住職として住んだ場所でもあり、私が好きな沢田研二さんが育った土地でもあります。そして、中村勘三郎さんが歌舞伎を上演し多くのお客さまたちと触れ合った所です。私もよく勘三郎さんにいろいろなお店に連れて行っていただきました。

 今回、そのお店の経営者の方たちから差し入れをいただき、見ていただき、その情の濃さに再び胸が詰まりました。お店に行けば勘三郎さんの思い出話で盛り上がり、また泣いてしまいます。芝居の本番中にも勘三郎さんの顔や亡くなった山形の親友の顔が浮かび、毎回涙が止まらなくなってしまいます。「こんな時間が永遠に続けば良いなあ…」というラストのせりふに込める感情に親友たちの姿がダブってくるのです。

 8月5日は山形花笠まつりで踊ります。昨年の中止の時にたまった気持ちを出し切りたいと思っています。祭りのできる平和な時間、こんな時間が永遠に続けば幸せですね!

(劇作家・女優、山形市出身)

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