渡辺えりの ちょっとブレーク

(128)濃厚な還暦の一年

2015/12/25 12:56

 年末の29日まで東京下北沢のザ・スズナリにてオフィス3○○(さんじゅうまる)公演「ガーデン」の本番中です。16日の初日からおかげさまでお客さまも大入りで、久しぶりの桟敷席もギューギュー詰めの状態でも最後まで皆さまじっと観劇してくださっています。アフタートークも小日向文世さんから始まって、中村獅童さん、そして19日の夜は小泉今日子さんでした。26日は中村勘九郎さんと宇梶剛士さんが来てくれます。

 小泉さんが初めて生の舞台を観たのが劇団3○○の「夜の影」だったことなど30分のトークに花が咲きました。小泉さんとは私が30歳の頃、彼女がまだ10代だった頃に共演したのが出会いで、スズナリで初めて上演した「風の降る森」の時に使わなくなったステージ衣裳を段ボール箱4箱にして私のアパートまで運んでくれました。エレベーターのないアパートの4階まで一人で運んでくれたのです。若い頃から自立した頼りがいのある大人の女性でした。

 今回の「ガーデン」は18年ぶりの再演で、父をモデルにした戯曲「光る時間」と同じ時期に書きあげたものです。「ガーデン」の主人公の一人光子は母をモデルにして書きました。体の弱い姉と弟の間で子供の頃から必死で働き、つらい思いを繰り返したといつも言っていた母。文学好きな夢見る少女だったのに結婚してから小説を読む時間もなくなり、子育てが終わったと思ったら老眼で何も読めなくなってしまったとぼやいていた母。そんな母をモデルに書いた作品です。今は介護施設にいる母に捧げたい作品です。人の生と死とは何か? 私が20歳の頃から考え色紙に書き続けている「夢見る力」に寄せる思いを描いています。生きることの哀しさ儚(はかな)さも含めて壮大な物語になっています。

 一人が何役も演じる早替えの多い、入り組んだストーリーですが、生演奏や踊りの入った、コミカルなシーンも多い芝居で、初めて観てくださったお客さまにも好評でした。劇団が荻窪にある頃に、劇団の看板を見かけながら一度も観たことがなく今回初めて観ることができて本当に良かったと声を掛けてくださったお客さまもおられました。

 小日向さんには60歳でこの作品をやったのは本当にえらいと褒められました。出ずっぱりで何役もやり、大勢の出演者を演出した労力を、演劇の仲間としてたたえてくれたのでした。今回は振り付けも衣装プランも自分自身でしたので、本当に大変でした。立ち回りや踊り、生演奏と、集団シーンも多く舞台の仕掛けも多く、劇団でしかやれないような作品を、塾生にも手伝ってもらい、プロデュース公演で上演できたのは奇跡に近いことかもしれません。協力してくださったすべての皆さまに感謝します。

 60歳の年も暮れ、来年1月5日でもう61歳。ついこの間還暦コンサートをやり、山形花笠まつりに参加したばかりだと思っていたのに、あっという間の一年でした。正月は山形に帰るのを楽しみにしています。60歳になったら山形で演劇塾を開くという夢も実現できるように頑張ります。皆さま応援ありがとうございました。良いお年をお迎えください。

(劇作家・女優、山形市出身)

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