渡辺えりの ちょっとブレーク

(134)花々の眠る部屋

2016/6/29 12:43

 渡辺流演劇塾を新たに始めて4年目になる。今年の4月に4期生が入ってきて2カ月。今月の24日から26日まで、東京世田谷区の下北沢の「楽園」という小さな劇場で塾の公演「花々の眠る部屋」を上演した。この作品は25年前に大阪で初演、その後宇宙堂でも一度新人公演として上演された作品だが、今回塾生たちが自ら選んで再演された。

 A、B班の2班ダブルキャストで上演されたが、自分たちで衣装も小道具も大道具も作り、なかなか面白い作品に仕上がった。演出は土屋良太が担当し役者としても出演してくれた。劇場に入ってからは元劇団員の大内史子が出演している土屋に代わって細かいダメ出しをしてくれた。土屋も大内も20年以上前に私が開いていた夢人塾という演劇塾の生徒で、大内はまだ高校生だった。それがこんなに読解力に優れた頼りになる人物になるとは…。あっという間の時間ではあるが、これが時間の凄(すご)さなのだろう。

 花屋の息子が花屋の冷蔵庫の中で、眠る花々に取り囲まれながら夢想するストーリーで、当時親しかった南河内万歳一座の河野洋一郎さんという花屋の息子だった役者に当て書きした戯曲で、河野さんの家に泊まり込んで取材して書きあげた作品だった。ユリ、キキョウ、ナズナ、ボタン、シオン、アザミ、ハギ、ツチグリとさまざまな植物が人間となって現れる不思議で切ない物語である。宮沢賢治の青森挽歌(ばんか)という詩に曲を付けて出だしとラストに使っているが、その曲を作ってくれて、劇中の放火癖のある消防士の役を演じてくれた藤田辰也さんが昨年突然死してしまった。素晴らしい曲を作る真面目で繊細な役者だった。

 2年前に宮沢賢治の人生を描いた「天使猫」でもこの曲を使わせてもらったときに兵庫公演に駆け付けてくれてとても喜んでくださった笑顔が忘れられない。「オールドリフレイン」の曲を作ってくださった安保由夫さんも昨年突然お亡くなりになり本当に寂しい限りだが、曲を演奏し歌うたびに生きた時間が甦(よみがえ)る。演劇とは不思議な芸術だ。必ずその時生きている者たちが生身の肉体をさらしてそこにいるのである。過去に作られたものが演じるたびに繰り返し生きかえるのだ。25年前の作品が少しも古くならずに目の前に甦った。

 能年玲奈ちゃんや篠田麻里子さんたち若い世代の役者たちも見に来てくれて「面白かった」と言ってくれた。塾生に年齢制限がないため主人公の一人18歳の百合子が100歳の老婆に変わる場面を73歳の塾生が演じたが、お客さまに大うけだった。初演は若い役者が老け役で演じた場面が今回やけにリアルなシーンとなったのだ。

 私の書く芝居はシュールで、時間と空間が入り乱れる特徴があるのだが、18歳から73歳までの塾生が自分たちの限界に挑戦し個性を発揮してくれたのがうれしかった。もちろん大変な稽古を支えてくれた土屋はじめ、スタッフたちに大感謝である。

(劇作家・女優、山形市出身)

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