渡辺えりの ちょっとブレーク

(138)本当は若い?「三婆」

2016/10/29 12:40

 11月1日初日の「三婆(さんばば)」の稽古のラストスパートの日々。9月に続いての新橋演舞場での公演で、おかげさまでチケットは完売。面白い舞台を作ろうとスタッフ、キャスト一丸となって頑張っている最中です。

 私は小学校の学芸会の頃から、お母さん役かお婆(ばあ)さん役。小学校5年で初めて級友と共作した「光る黄金の入れ歯」というミステリーの台本を山形六小の謝恩会で上演した時も、主人公のお婆さん役を演じて好評を博しました。

 八千草薫さんに依頼されて初めて出演した商業演劇「楡家(にれけ)の人々」での役も山形出身の婆やの役で、私の母親と同い年の八千草さんよりも30歳年上の役でした。

 テレビドラマの「おしん」では20歳から80歳まで演じて、田中裕子さんをいじめ、乙羽信子さんに謝った「オトラ」という兄嫁を演じました。体も太っていて、声も太いので、若い頃から老け役を演じることが多かった訳なのです。

 それが、この欄でも何度か書かせていただいたように、25歳の芸者や35歳の旅館の女将。37歳の奥方様など、年より若い役を演じる機会が多くなってきて、少しいい気分になっていたところにこの「三婆」の舞台である。実年齢の61歳の役で「おばあさん」「おばあちゃま」と普通に呼ばれてしまうのです。50年前の作品なので、今の60歳とは違うとはいえ、ばあさん扱いされるのがこんなに嫌なものだとは思わなかった。今までは若いのにばあさんを演じていたという遊び心があったが、本当にそのままお婆さん役をやる時が来てしまうとは…。

 共演の大竹しのぶさんもキムラ緑子さんも稽古場で少々落ち込んでいるのです。

 しのぶさんは「あたし、若すぎるよね?」と何度も私に確認してくる。「うん、舞台は遠目だから若く見えるものねえ…」と私。「ええ?遠目じゃなくても若すぎない?」。なんと答えて良いやら、言葉を濁す私。しのぶさんは今年59歳、来年が還暦だが、声が若いので、今まで、私とは違って若い役をずっと演じてきた。50歳過ぎてから16歳の役を演じたこともある。しかも今回は男性と恋愛するような役でなく、旦那様がお妾さ(めかけ)んの家で倒れて亡くなってしまった未亡人の役で、いろいろと演技についても悩んでいる様子。

 私も60歳で処女、今まで働いたことが一度もないという体の弱い不思議な婆さんの役。いろいろと試行錯誤しながら頑張っている。緑子さんはお妾さんの芸者役で、本妻のしのぶさんの家に転がり込んで面倒をみてもらうというちゃっかりやの婆さん役。

 その私たち3人の面倒を看(み)ながら老いていく番頭役に段田安則さん。

 その妙な家族に絡んでくる若い女中さんと八百屋さんに物まね芸人の福田彩乃さんとジャニーズの安井謙太郎さん。

 さまざまな色濃い個性がぶつかり合っての稽古の追い込みです。今回もまた山形の両親が見に来てくれることになっています。

 老人ホームに入所している両親に老人問題を考える「三婆」を見てもらいます。

(劇作家・女優、山形市出身)

[PR]
[PR]