渡辺えりの ちょっとブレーク

(139)新作劇を執筆中

2016/11/28 12:39

 「三婆(さんばば)」も27日が千秋楽。チケットは早々に完売でうれしい悲鳴をあげています。同世代のお客さまが多く、皆さまひとごととは思えず、大笑いした後にしみじみと老後を考えながら帰路につくとおっしゃっている。

 男に頼って生きてきた。本妻、お妾(めかけ)さん、亡くなった社長の病弱な妹。今まで自立できなかった女3人が、結局肩寄せ合って暮らすことになるという皮肉な物語だが、50年前に書かれたこの物語が決して古くなく、逆に今日を暗示しているのがすごいのである。第1回目の東京オリンピックの前の年に戯曲は書かれ、高度成長期の中取り残されていく老人たちの未来への不安が残酷に描かれていくが、高齢化、少子化の現在にこそぴったりのラストシーンになっている。小幡欣治という劇作家のすごさを身をもって感じ、細かな部分を書き加えて現代バージョンとしてよみがえらせた斎藤雅文さんも素晴らしい。

 私も新作「鯨よ!私の手に乗れ」を書きながらの本番だが、偶然老人問題をテーマにしようとしていたため、なかなか筆が進まない。書こうとしたきっかけは母が介護施設に入所したことであったが、今は小規模で若い介護士たちとの交流も多く、デイサービスも充実した老人ホームに父と共に入所して笑顔の絶えない様子なのがうれしい。東京と山形と、遠く離れ、親不孝な日々が続くが、芝居が終わったらゆっくりと会いに行きたい。また20日に山形の老人ホームに暮らす両親が見に来てくれた。楽屋で「三婆」弁当をおいしそうに食べて、芝居にも満足した様子だった。連れて来てくれた友人といとこに大感謝である。

 私の「三婆」での役は心臓が弱く、一生独身のまま年を取ってしまった妹役で、兄が死んで住む家も無くなり、収入もなく、無理やり兄の妻のものとなってしまった家に押し掛けて居候を決め込む役なのだが、本妻に老人ホームに入所させられそうになって拒絶するシーンが物悲しい。そんな場面を老人ホームに入所している両親が見に来る。

 私の新作は、地方の劇団で一緒に芝居を作っていた女優たちが年を取ったら一緒に暮らして、昔上演できなかった作品をまた共に演じようという約束の下に集まり、芝居の稽古を始めるという内容。認知症になっている仲間もいて、なかなか稽古が進まないというコミカルな作品だが、回想シーンがミュージカルになったり、シリアスなドラマになったりと面白い趣向を凝らした作品になりそうである。

 「あまちゃん」で一緒だった木野花さん、元劇団四季のスター久野綾希子さん、鷲尾真知子さん、広岡由里子さん、昨年鶴屋南北戯曲賞を受賞した、劇団KAKUTA主宰の桑原裕子さんら豪華なメンバーでお送りする新作。時間がありましたらご覧ください。

(劇作家・女優、山形市出身)

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