渡辺えりの ちょっとブレーク

(143)自分自身の再確認

2017/3/31 12:28

 昨年の夏から舞台出演が続き、2時間ドラマの撮影があり、暮れに新作を書きあげ新年1月にオフィス3○○の新作公演。この間全く休みがなくそれでも元気にやって来られた。

 そして、2月5日に公演が終わった後にバラエティー番組の香港ロケの最中、何だか踊りたくなって何時間も踊っても少しも疲れないという異常事態に陥った。これは変である。たぶんアドレナリンとかドーパミンとか、セロトニンとか火事場の馬鹿(ばか)力的な成分が体内から分泌されているに違いないと思った直後、やはり具合が悪くなってきた。

 体がだるく、下腹が痛い。夜もなかなか寝られず、寝ても歯ぎしりしているのが分かる。悪夢にうなされたりもする。婦人科に行き検診したが異常なし。2年ぶりに人間ドックに行こうとしたが予約が取れず、北海道旭川の知人の病院まで行って体全体を調べていただいたが逆流性胃炎の他は異常がない。これは夜寝る前に食べるのを止めれば治るらしい。舞台に出演していると開演前は緊張で食べ物が喉を通らず、終演後の夜遅くに食事したりお客さまとお酒を飲んだりしてしまうので、今後は気を付けなくてはならない。

 体の調子が悪いのは疲労のせいかもしれない。舞台にはお金が掛かるので、働かなくてはならない。しかし、忙しいと本をじっくり読んだり構想を練ったりする時間がなくなるという悪循環にもなってくる。

 日本人の女性の健康寿命は74歳という。あと12年。そんなふうに考えると、このままで良いのか? この先何を積み重ねていけば良いのか、悩んでしまう。

 自分の仕事はお客さまがいなければ成り立たない仕事である。人々の笑顔が見たくて苦労を重ねている。人々が住みやすい平和な世の中を作ることも私たちの仕事の一つである。今の世の中に対しての疑問や危惧も含めて作品にしていく必要があると思っている。

 しかし、あまりに忙しいと人は心をなくしてしまい、自分が今を生きるだけで精いっぱいになってしまう。今を生きるだけで良いではないか?と言う方もおられるだろうが、ゆとりがなくては歯車も回らないのと同じで、客観的に己を見つめる余裕のない人に相手を思いやる心は生まれにくい。時々は演劇や映画を見たり、音楽を聴いたりして笑い泣き、人生を考える時間が必要である。

 私たちが作ったり演じたりする作品は、人が豊かに優しく生きていくために生み出された仕事なのである。そんな仕事を選んだ自分が、自分をきちんと見つめ直す余裕がなくなっているのではないか?と不安になってくる。しかも、演技なのか?地なのか?自分自身の性格も掴(つか)みきれなくなってしまった。ドラマに出演しているときの演技とバラエティー番組での地の部分との境。街で「テレビと同じね」などと声を掛けられると「いいえ、あれは演技です」と抵抗しながら「もしかすると自分は自分を失ってしまっているのではないか…」という不安がよぎる。

 26日と27日「春の光」という題名の小さなコンサートを東京でやりました。なんだ結局自分で忙しくしているのではないかと思われるだろうが、お客さまに求められれば結局何でもやってしまうのである。そしてそれが自分自身の再確認でもあるのだ。

(劇作家・女優、山形市出身)

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