渡辺えりの ちょっとブレーク

(157)豪華布陣、節目の公演へ

2018/5/31 22:01

 6月7日初日の新作「肉の海」の稽古中である。23歳で劇団を旗揚げして、40年。その記念の公演ということで、多くの豪華ゲストが出演する。

 私が高校生の頃、県民会館で観た劇団四季の「オンディーヌ」に主演した三田和代さんが出演して下さる。私が書いた台詞(せりふ)を三田さんが喋(しゃべ)って下さるというだけで、興奮してくる。その説得力のある物言い、存在感に感動し、涙がこぼれるほどである。

 劇団乾電池の旗揚げメンバーで大好きなベンガルさんも初出演して下さる。一言喋るだけで大笑いしてしまうほど、ユーモア溢(あふ)れる演技が素晴らしい。

 一昨年、演舞場で上演された「狸御殿」で共演した青木さやかさん、土屋佑壱さん、大地洋輔さんも出演して下さっている。青木さんは発想が凄(すご)い。思い切りが良く、嘘(うそ)がない。土屋さんは役を本当に楽しそうに、工夫して体当たりで演じてくれる。体も柔らかく、踊りもうまい。大地さんは、変化の激しい役でも、つじつまが合わなくても、すべて感覚で繋(つな)げてくれる。どんな設定でもできないと言うことがない。みんな、物凄い個性とめりはりのある演技。大変な役を面白がって演じてくれていることに感謝である。

 歌唱力に定評があり、さまざまな舞台で活躍してきた土居裕子さん、宝塚のトップを務め、味のある演技で人気の高い久世星佳さん、皆さんベテランなのに謙虚に真面目に稽古して下さっている。「モアナと伝説の島」のモアナの声を演じた屋比久知奈さんも初舞台だというのに、透明感のある素直な演技で魅力が光る。そして、狂人の役を繊細に読み込んで稽古場を引っ張ってくれている尾美としのりさん。読み込みが深い。

 40年やってきて、素晴らしい方たちと作品を作ることができて幸せだと思う。作品は、23歳で旗揚げした作品と重なる。今回原作となった「塔と重力」は上田岳弘さんの作品だが、私が長年作品で表現したいと思ってきたテーマがたくさん詰まった小説で、そのモチーフを使わせていただき、私の作品の個性も随所に入れたいと考えた。歌と踊りと殺陣も入れる。3〇〇の過去の作品のテーマもところどころにちりばめてある。

 阪神淡路大震災から23年。当時被災し、生き残った田辺という主人公は初恋の女性を地震で失った。時がたち、涙が止まらなくなる奇病に襲われる。自分だけが生き残り、彼女を救えなかった悔恨が今も精神を縛っている。かつて田辺に命を救われたことのある級友水上が田辺を救おうと、亡くなった女子高生美希子の代わりの女性を何人も田辺に会わせようとストーカーのように付きまとう話である。小説には登場しない美希子の一家が主軸となる。

 昔と違って寝不足がきつく、貧血を起こしそうになりながら頑張っている。40年前と同じように大変で、同じ作業をしている。とにかくスタッフ、キャストに感謝しつつ頑張りたい。

(女優・劇作家、山形市出身)

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