渡辺えりの ちょっとブレーク

(173)両親思い、寂しさ募る

2019/10/30 21:36

 台風の被害が物凄(ものすご)い。福島の皆さんは震災からの復興もまだまだの状況の中の災害で本当に大変だと思う。どの地域でどのような援助が必要なのか? 見えない部分が多い。できる限りのお手伝いをしたいものだ。

 今月も両親のお見舞いと9月の山形公演のお礼に2日間だけ帰郷した。いつも応援してくれる気の良い友達が集まってくれた。台風のために慌ただしいスケジュールだったため、会いたくても会えない親戚や友人たちも多かった。後は年末年始まで両親に会うことはできない。

 私も歳をとったせいか、両親とこたつに入れないのが寂しくて仕方ない。だらしなく畳に寝そべり、テレビを見ながら昔のように喋(しゃべ)りたい。介護施設で介護士の皆さんに親切にしていただいているが、2人とも規則正しい生活を送り、テレビの前の大きなテーブルを入所者の皆さんと囲み、車椅子(いす)に座ってじっとしている。それぞれの個室に入って話してもこたつがある訳でも、だらだらと寝そべって話すこともできない。青菜漬けを食べながらお茶を飲むこともできない。

 「母ちゃん、父ちゃん」と叫びながら泣きたくなる気持ちを抑えるのが精いっぱいなのである。64歳にもなって精神的自立をしていなかったのか?と落ち込むくらい寂しくなる。

 両親は幸せなんだろうか? 親不孝な自分。子供の頃からいろいろとしてもらってばかりだったのに、家で自分が面倒を見ることもできないのだ。弟夫婦に世話をお願いしているが仕事も忙しそうで大変だろう。

 台風の去った後、久しぶりに石垣島に行った。お世話になった同い年の方が末期癌(がん)になってしまい、余命わずかだとの連絡を受けたからだった。山形で買った、お米と漬物とのし梅をとても喜んでくださった。特にお米はその方の家族の皆さんが「本当に美味(おい)しい!」と口を揃(そろ)えた。山形のすべての種類のお米を少しずつ持っていって美味しいものを今度送ると伝えたら、全部美味しくて選べないとのことだった。私がストレスで体が動かなくなった時にシュノーケリングの指導や、珊瑚(さんご)の産卵などを見せてくださった。高校生と中学生のお孫さんもおられ、陽気で明るく気の良い一家の主なのだ。5年前に私の植えさせていただいたマンゴーが実り、今年の8月の稽古中に実ったマンゴーをたくさん送っていただいた。苦労して一家で育てていただいた貴重なマンゴーであったことが、今回畑に案内していただいて分かったのだった。

 山形と石垣島。北と南で気候も、食べ物も習慣も違うが、温かい人柄、ゆったりとした時間、自然の美しさという共通点が多い。

 故郷の温かさがある。両親に石垣島の青い海やマングローブの川、マンゴーの畑を見せたかった。山形牛の先祖である、石垣牛や美味しい魚も食べてもらいたかった。どうしていろいろなことを後悔ばかりしてしまうのか? 山形で初めて食べたいさご食堂の美味しいラーメンも両親に食べさせたかった。25日から舞台の稽古も始まり、劇作家協会の仕事も忙しい。来年こそ落ち着いてゆっくりと山形にいられる日をつくりたい。

(女優・劇作家、山形市出身)

[PR]
[PR]