第4部・連携の課題と新たな可能性(2) 西村山地域の現状~明日につなぐ地域医療|山形新聞

明日につなぐ地域医療

第4部・連携の課題と新たな可能性(2) 西村山地域の現状

2022/4/21 10:02

 診療実績が乏しいなどとして厚生労働省が2019年9月、再編統合の議論が必要と名指しした公的・公立病院のうち、本県で該当した7病院中3病院が西村山地域に集中した。県立河北、寒河江市立、朝日町立の各病院だ。2年半が経過したが、同地域では再編統合の話し合いは一度もなく、協議のテーブルもできていない。

 寒河江、河北、大江、朝日、西川の西村山5市町の中核を担う寒河江市。県や国への重要事業要望で、同地域の医療供給体制について、県立河北と寒河江市立との統合を軸に周辺の他町も交えた形での検討を県が主導して進めるよう求めている。要望に至った背景には二つの要因がある。一つは市立病院の老朽化。もう一つは、どの自治体病院にも共通している厳しい経営状況だ。

 2000年に9万2118人だった同地域の総人口は、25年には約2万人減少し、7万2007人となる見通し。人口減少と高齢化、勤務医不足が顕在化する中、救急医療を確保しながら在宅支援を充実させることが喫緊の課題になっている。患者の大規模病院志向も高まっている。将来を見据えて住民に身近な医療をどう守り、「地域完結型」として維持していくのか。地域の未来に責任のある協議と決断が求められている。

 佐藤洋樹寒河江市長は市立病院の老朽化を懸念しつつ「4、5年程度で新施設を構えたい」と話す。新病院を設立する際は寒河江市にとどまらず、西村山全体の医療提供態勢の議論が必要と考えている。朝日町立病院や西川町立病院についても「ともに今後の方向性を考えていければいいのでは。人材の融通、医療資機材の共有など連携できるのではないか」と語る。

 地域全体で経営を効率化するため、施設整備だけでなく、運営組織の在り方を含めた議論を加速度的に進めていく必要性を挙げる。同市が再編統合相手の筆頭と捉えるのが県立河北病院。新型コロナウイルスの治療を担う重点医療機関としても地域医療を支えるが、赤字経営が長年続き、県立4病院の運営を圧迫している側面もある。

 森谷俊雄河北町長は町外からの利用が入院、外来とも6割を占める実績(2020年度)を挙げ「町内外から高いニーズがある」と強調。県立病院として同町に存続するのが前提とし、「西村山地域と近隣自治体病院の医療ニーズをあらためて把握する必要がある」と話す。

 特に救急搬送を含む夜間・休日の患者の受け入れ態勢が不可欠とし「経営効率化や再編統合ありきではなく、高齢者や乳幼児でも安心して地域で暮らし続けられる医療態勢の確保を最優先に議論したい」とする。

 県立病院を運営する県病院事業局の大沢賢史病院事業管理者は「河北病院と近隣自治体病院との再編統合は重要な選択肢」とするものの、コロナ禍で公立病院が果たした病床確保の役割も加えて検討しなければならないとの考えを示す。

 「他病院との再編統合を考えているか」を尋ねた山形新聞社の取材に対し、国に必要性を名指しされた朝日町立病院は「考えていない」と答えた。「町内唯一の病院で入院施設がなくなった場合の影響を考えると、現状維持が最も望ましい。町長、病院を含めた意向」と強調する。一方、国に名指しされなかった西川町立病院は「西村山地域の医療の在り方は今後、検討していかなければならない」と答えた。再編統合への思いはさまざまだ。

 昨年12月の県議会予算特別委員会で、平山雅之副知事は「西村山地域の医療提供態勢の見直し議論は、避けては通れないと承知している」と答弁した。しかし、協議のテーブルがいつ設けられるのか、誰が音頭を取るのかは、まだ示されていない。

【メモ】寒河江市立病院は1973(昭和48)年に完成。現在の診療科は内科や整形外科など六つで常勤医は9人。市民を中心に外来、入院の機能を担う。河北町にある県立河北病院は81(同56)年に完成。内科や外科など16診療科で常勤医は20人。

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