明日につなぐ地域医療

第4部・連携の課題と新たな可能性(1) 進まない病院再編議論

2022/4/20 11:45

 突然の公表だった。2019年9月。厚生労働省は診療実績が乏しいなどとし、再編統合の議論が必要な全国424の病院名を発表した。県内では県立河北、天童市民、朝日町立、寒河江市立、町立真室川、公立高畠、酒田市立八幡の7病院が名指しされた。

 しかし、既に八幡病院が県・酒田市病院機構に移管統合されて日本海八幡クリニックとなり、天童市民は単独での病床再編に着手していた。診療実績などを評価する上で同省が基にしたのは17年のデータ。タイムリーな分析ではないとし、全国から疑問視する声が出たが、公表したのは団塊の世代全員が75歳以上の後期高齢者となる2025年が目前に迫っていたからだ。

 国は病院の再編統合を進め、供給過剰になっている急性期病床を回復期病床などへと転換させ、後期高齢者の受け皿を確保する一方で社会保障費の抑制にもつなげる方針で、公表により協議を加速する狙いがあった。都道府県は地域の実情を反映した必要病床数などを定めた「地域医療構想」を策定し、病床再編を協議している。だが、病院がなくなることを不安視する住民への配慮や、病院がなくなることに慎重な姿勢を貫く首長が多いこともあり、再編の議論は都道府県ごとの構想通りに進まないのが現状だ。

 当初は医療需要の動向などを踏まえ、名指しされた病院の再編統合の結論は公表から1年後の20年9月が期限だった。しかし公表から半年もたたず、新型コロナウイルスが広がり、議論は休止となったままだ。

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 公立病院に関し、総務省は不採算病院などの統廃合を求める従来の見解を撤回したが、経営改善や地域内での役割分担、連携強化に取り組まなければならないことに変わりはない。第4部では、従来からの議論を含めた県内の医療連携の課題と、新たな枠組み、手法での協議・連携の可能性を探る。

「後方支援病院」として病床転換を進めてきた天童市民病院=天童市

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 「村山医療圏にある基幹病院の後方支援病院」。天童市民病院の石山真一事務局次長(55)は、自院をこう表現する。同病院は「再編統合の議論が必要」と厚生労働省が2019年9月に公表したうちの一つだが、名指しされるより前の18年11月から独自の病床再編を始めていた。県保健医療計画に基づき、村山医療圏全体を見渡してのことだ。

 改革したのは2階病棟。それまで46だった急性期病床を20に減らし、8だった地域包括ケア病床(回復期)は34に増やした。さらに19年11月には54床全てを地域包括ケア病床にした。

 地域包括ケア病床は在宅や施設への復帰に向け、医療看護、リハビリを提供する。症状に応じ、最大60日まで入院でき、高齢化が進む地域で増床が求められている。石山次長は病床転換の狙いを「患者を奪い合うのではなく、地域で役割分担して医療を完結させること」と語る。

 同病院は県立中央病院など山形市内の基幹病院から車で10~15分ほどの距離にある。山形市内で手術を受けた患者が天童市民病院の地域包括ケア病床に入り、療養中は自宅や特別養護老人ホーム、介護老人保健施設などへ戻るため、退院に向けた支援を受ける。高齢者世帯などは自宅での介護が困難なケースも多い。施設に入れない場合は、別に設けている療養病床30床でみとりまで担う。

 検診、予防医学の充実も目指した。08年に現病院が改築オープンして以降、整備してきたコンピューター断層撮影装置(CT)、磁気共鳴画像装置(MRI)、最新のマンモグラフィー(乳房エックス線撮影)を最大限に活用している。他のクリニックから依頼を受け、撮影をすることもある。

 ただ、病院の機能を転換する際には、地元の理解を得るのに苦労があったという。急性期病床がなくなることで「市民病院では、もう手術をしてもらえないのではないか」という誤解が一部で広まった。以前と同様、外来や救急搬送に対応できることを市議会や市報で説明を重ねた。

 急性期の他病院から転院する患者を受け入れるために、退院に向けた支援や患者家族への説明など、より迅速な対応が求められるようになった。「公立病院であっても、経営改善するにはどう行動すべきか、考えなければならない」。石山次長は職員の意識改革も促した。

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