明日につなぐ地域医療

第2部・病院が直面する課題(7) 人手不足その4

2021/12/6 14:57
日本海総合病院から出向している多次見歩さん(手前右)。斎藤由紀看護部長からも頼りにされている=酒田市・本間病院

 日本海総合病院を運営する県・酒田市病院機構を中心とした地域医療連携推進法人「日本海ヘルスケアネット」の、全国に先駆けた取り組みの一つが人事交流だ。連携を進める上で、当初から挙がっていた課題が、医療人材不足への対応で、現在14人の医師と看護師が法人内で元の職場から別の病院などに出向している。地域内で人材を融通し合える環境が整っている。

 県立日本海病院と市立酒田病院が統合再編し、2008年に現在の日本海総合病院を運営する県・酒田市病院機構が誕生した。そこから10年目の18年2月に日本海ヘルスケアネットを設立した。

 このとき、酒田市北東部の八幡地域にある旧市立八幡病院は同ネットを構成する「日本海八幡クリニック」となり、病床を廃止した。同時に八幡病院から看護師30人ほどが、日本海総合病院に移籍した。同機構の佐藤俊男参事は「比較的、人的余裕ができたことで、法人内での人材の融通も可能になった。人事交流は初めから構想に入っていた」と説明する。

 同じ地域の病院同士がともに成り立っていくことが、地域医療を守るためには必要。患者だけでなく、人材も奪い合わずに共有し、融通し合う仕組みづくりに向けた取り組みが始まっている。

 酒田市内中心部にある本間病院。中心市街地の身近な総合病院で、大規模な透析室を構え、北庄内地域の透析患者にとっては欠かせない医療機関となっている。日本海ヘルスケアネットを構成する同病院では、日本海総合病院から出向する3人の看護師が活躍している。「頼れる存在。助かっている」と本間病院のスタッフは語る。

 「他の病院ではどう対応しているのだろうか興味があった」。本間病院に出向している看護師多次見歩さん(41)は今年10月から、透析室で働いている。日本海総合病院でも人工透析室に勤務し、この分野に関わっていた。患者に治療方針などを説明する役割も担っていた多次見さんは、より良い対応を目指し、自らの見識を広げるためにも出向を希望したという。

 「即戦力で、日本海でしか経験できないことも知っている。若手にとっては、教わることも多いはず」と、本間病院の斎藤由紀看護部長。より症状の重い患者は日本海総合病院で担当し、日常生活の中で維持透析をする状態であれば、本間病院が担当するという役割分担ができている。出向期間は原則1年。戻った後も透析を担当するケースがある。患者も症状の変化によって、双方を行き来することがあり「日本海にも知っている看護師がいれば、患者の安心にもつながる」と斎藤看護部長は話す。

 成り立ちや運営法人が異なる病院間で人事交流を実現するには、給与など待遇面の違いを調整する必要がある。日本海総合病院から本間病院に看護師を出向させる場合、給与の差額は県・酒田市病院機構が補てんし、出向先でも同水準の給与で働けるようにしている。人事交流は単純な人手の確保、融通だけではなく、情報共有、スキルアップという面でも効果を発揮している。

 若手医師にとっては、先進的な手術や治療を経験しさまざまな症例を扱うことが、その後のキャリアを積む上で重要になる。日本海総合病院では、手術支援ロボット「ダヴィンチ」による腹腔(ふくくう)鏡手術が積極的に行われており、カテーテル室の機能を手術室と一体化した「ハイブリッド手術室」なども整備されている。幅広い診療科の経験ができるため、勤務を希望する研修医は多いという。

 「毎年、研修医は10人以上を採用できており、定員を増やして対応している」と担当者。県・酒田市病院機構の佐藤俊男参事は「地方の病院としては一定の投資をしっかりできている点や、日本海ヘルスケアネットの取り組みも働く場として魅力的に見えるのかもしれない」と語った。

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