明日につなぐ地域医療

第2部・病院が直面する課題(6) 人手不足その3

2021/12/5 15:17
2021年度のスチューデントドクターの認定証を受けた山形大医学部医学科の学生たち。県内定着が重要課題だ=10月4日

 医師数の充足状況を示す医師偏在指標を基に国が都道府県や全国335の2次医療圏ごとにつけた順位(2019年12月時点)を見ると、県全体は全国40位に低迷している。2次医療圏では村山71位、置賜208位、庄内241位、最上334位。特に地方の医師不足が顕著だ。医師だけでなく、看護師ら医療人材の不足に多くの病院があえぐ中、新型コロナウイルスの感染拡大は、医療現場のさらなる逼迫(ひっぱく)を招いた。マンパワーの不足は診療体制の縮小につながる。

 県医療政策課によると、16年12月現在、県内の医療施設の常勤医師数は2443人。医師少数県を脱するためには23年度までに県全体で16年時点より80人増やす必要があり、県はさまざまな確保策に取り組んでいる。その一つが、医師修学資金貸与制度。修学資金は年200万円で、原則として卒後9年間、県内の公立病院などで働けば返す必要はない。貸与を受ける医学生は21年9月末で140人に上る。

 山形大医学部医学科の定員には県内高校出身者が対象の「地域枠」も設けている。22年度は21年度と同じ8人を確保した。地域枠の学生には県の医師修学資金が貸与される。同大が15年度に地域枠を設定して以降、入学者は約60人を数え、1期生は現在初期研修中。それぞれの診療分野で活躍するのは数年後の見通しという。県は「地域枠の継続に加え、山形大や県内の医療機関との連携により、医師確保と定着の取り組みを進めていきたい」としている。

 さらに、卒後9年間、地元医療機関で働けば授業料などが免除される自治医科大の運営に、県は毎年1億3千万円程度を拠出。本県から毎年2、3人が入学している。同大はへき地医療の確保、地域住民の福祉増進を重視しており、卒業した多くの医師が本県の地域医療を支えている。

 山形新聞が20床以上の県内全67病院に行ったアンケートでは、医師不足の原因を山形大医学部卒業生の県内定着率の低さと指摘する病院が多数あった。医師が定着するための鍵は何か。同学部付属病院卒後臨床研修センター(山形市)の今田恒夫センター長は卒後2年にわたる初期研修を挙げる。「学生は初期研修を受けた県で、そのまま専門医の研修に入るパターンが多い。学生と病院側とのマッチング率の向上が県内定着の第一関門」と説明する。

 県内での初期研修の受け入れ先は山形大や県立中央など高度医療を提供する9病院。2021年は計116人の枠に対し、応募は69人で、マッチング率は6割にとどまった。近年のマッチング率は7割前後という。初期研修を選択する際、学生は研修プログラムや指導者の資質、医療設備に加え、衣食住の生活環境も重視する傾向が強く、都市部や学生の出身地に流れる傾向がある。選ばれる地域になるため、学生が望むさまざまな医療分野に対応するとともに、個人の自由度や満足度を高める研修プログラムの構築に力を入れている。

 一方、県内の看護職員の25年の需給推計では、1万7412人の需要に対し644人の不足が見込まれる。不足分を埋めるため、県と関係機関は「山形方式・看護師等生涯サポートプログラム」に取り組む。方針の柱は(1)学生の確保定着(2)キャリアアップ(3)新人看護職員の離職防止(4)再就業促進―の四つ。18年度実績比で25年度までに離職率は6.5%から4%以下に引き下げ、県看護協会に設置している無料職業紹介所「県ナースセンター」のあっせんによる再就業率は35.3%から50%に引き上げる目標を掲げる。

 新型コロナウイルスの感染拡大で、看護師の需要は急拡大し、再就業の重要性も増した。県ナースセンターは宿泊療養施設に従事する看護職17人を採用し、ワクチン接種で計55人の看護職の再雇用につなげた。若月裕子会長は「高齢者が住み慣れた地域で生活を続けられる地域包括ケアシステムの構築を各自治体が急ぐ中、在宅医療が重視され、高齢化による多死時代もこれから訪れる。離職期間があっても現場経験がある看護職のニーズは高まるばかり」と語る。

 若月会長は再就業を後押しするには、多様な勤務体系の導入や、現場での不公平感が出ないための給与条件の見直しが不可欠と分析する。大きなハードルは夜勤だという。「安心して子育てや介護をしながら従事するためには希望者への夜勤専従の導入や、不規則的な勤務シフトも可能とする柔軟な受け入れ態勢が必要」と続けた。

◆医師偏在指標 医師の充足状況を判断する目安として使われてきた「人口10万人当たりの医師数」に代わり、厚労省が2019年、より実態に即した指標として策定。都道府県や地域別の充足状況を数値化し、医師が十分充足されている上位16都府県を「医師多数都府県」、下位16県を少数県に位置付けた。

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