明日につなぐ地域医療

第2部・病院が直面する課題(5) 人手不足その2

2021/12/4 19:42
移転新築に伴い、定員増を検討している鶴岡市立荘内看護専門学校

 山形新聞が20床以上の県内全67病院を対象に行ったアンケートで、各病院が医師、看護師の人材不足を課題に挙げていることが浮き彫りとなった。人材確保のための入り口となる、看護師などの養成施設の現状はどうか。

 現在、県内には大学2校、3年課程6校、2年課程1校、5年一貫教育課程1校があり、さらに准看護師を養成する1校がある。このうち、鶴岡准看護学院(鶴岡市)が2022年度以降、篠田看護専門学校(山形市)が21年度以降の募集を停止した。鶴岡准看護学院は閉校を決めた理由を「学生の志向の変化などによる入学者数減少」とした。22年度に看護基礎教育の新カリキュラムが始まることを受けた講師の確保も課題だったという。

 同校は元々、地元で地域医療に携わる人材を育成するために鶴岡地区医師会が1959(昭和34)年に設立した。同校を卒業し、庄内地域で働く看護師も多くいるという。しかし、受験者数は2013年の77人をピークに減少し、昨年は31人だった。ここから試験を行い、近年は定数割れが続いていた。

 同校は「日本看護協会は多様なニーズに応えるために4年制化を推進しており、近年の学生もその傾向が強い」と分析。その上で「受験や就職、いずれかの段階で地元外、県外への流出が加速してしまうのではないか」と危惧している。

 県の看護職員需給推計によると、2019年3月に高校を卒業した人のうち、看護学校に進学した人は5.1%に当たる501人。割合は過去5年間ほぼ横ばいだが、少子化に伴い人数は減少傾向にある。同年3月に県内看護師等学校養成所を卒業した学生の県内就業率は大学が45.3%、3年課程は78.6%、准看護師課程は93.8%だった。

 同推計では、25年に県全体で644人の看護職員が不足すると予測されている。就職時点で県外に流出することで人材が不足するのを防ぐため、県をはじめ自治体や病院には修学資金制度を設立しているところも多い。資金を貸与した自治体や病院で一定期間勤務することで、返済免除となる仕組みだ。

 県内の看護師等学校養成所を巡っては、准看護師を養成していた新庄東高衛生看護科が03年度末に閉科したことで最上地域が空白区となった。看護人材確保と若者の流出に歯止めを掛けようと、新庄市が18年に養成所開設に乗り出した。しかし、学生を確保できるかや、市の財政負担が大きくなることなどから反対の声が大きくなり、断念せざるを得なかった。

 閉校や計画断念が続く中、定員増を計画している学校がある。移転新築して25年度の開校を目指す鶴岡市立荘内看護専門学校だ。現在の鶴岡税務署敷地と近接する市有地に建設することや、1学年の定員を現行から10人増やし30人とすることなどを盛り込んだ基本構想が昨年度策定された。

 策定の際、定員割れしてしまうのではないかと懸念する声も一部にあった。実際、近隣の酒田市立看護専門学校では過去5年間、定員割れが続いている。それでも定員増を掲げた理由について、同校の武田世津副校長は「不足する看護人材を確保し続けていかなければいけない。受け入れる枠があれば、県外流出を止める手だてにもなる」と語った。鶴岡准看護学院が閉校する分の需要も見込んだ。

 今後、人材を確保していくために必要なのは、小中学生など若い世代への周知活動と地域の協力という。看護学校の授業、実習には地元の医師、病院、行政、介護施設などの協力が不可欠だ。武田副校長は「ただでさえどこも多忙な中、やりくりしてもらっている。学生は地域に育ててもらっている」と語った。さらに「地域で育てることで、学生が卒業後、地元に残ろうと思うことにもつながる」と期待を寄せた。

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