明日につなぐ地域医療

第2部・病院が直面する課題(4) 人手不足その1

2021/12/3 12:04

 山形新聞が20床以上の県内全67病院を対象に行ったアンケートで、55%の病院が「医師の確保」、51%が「看護師の確保」を課題に挙げた(複数回答可)。不足人数は数人とする病院が多かったが、多いところで医師は25人、看護師は50人足りないと、窮状を訴える病院もあった。薬剤師不足を叫ぶ声もある。その中で、どのように地域医療を守るのか。県内医師の姿を追った。

 鮭川村でただ1人の医師として働く佐藤一賢(かずたか)さん(50)。祖父が開業した佐藤医院を2015年から引き継いだ3代目だ。午前中は医院で診療し、午後は週4日、県立新庄病院(新庄市)で非常勤医として勤務する。さらに学校医として村内の小中学校を回り、村内の介護施設へ往診する。時にはその施設でみとりも行う。

 唯一の休みは日曜日。しかし、新型コロナウイルスのワクチン接種のために返上し、村内の集団接種を一手に引き受けた。民間医院でありながら、役割は多岐にわたる。「半ば村立だと思ってやっている」。自分が新型コロナに感染することがあってはならないと、集団接種の期間は家族と離れて暮らした。“たった1人”は緊張感もあるが「やりがいがあるし、ここで育った恩がある。だから踏ん張ることができている」と強いまなざしで語った。

鮭川村でただ一人の医師であり、最上地域の腎臓内科専門医の佐藤一賢さん=同村・佐藤医院

 鮭川村でただ一人の医師である佐藤一賢(かずたか)さん(50)は、最上地域でただ1人の腎臓内科専門医という顔も持つ。2015年に父から村内の佐藤医院を継ぐまでは、県立新庄病院(新庄市)の常勤医だった。「当時の方が、今より大変だった」と振り返る。担当患者は常に20~30人抱えていた。当直は週1回。簡易型携帯電話(PHS)が引っ切りなしに鳴った。

 佐藤医師が医院へ移って以降、同病院腎臓内科の専門医は不在のままだ。非常勤になった今も、同病院で透析治療などを担う。1次医療圏と2次医療圏、どちらの現場も見てきた佐藤医師は「腎臓内科も足りないが、新庄病院は麻酔科医も1人しかいないなどの課題がある。常勤医の負担をいかに減らしていくかも私たちの役目」と語った。

 医師不足の手だてとして、地域医療連携推進法人より緩やかな形で集約を図る動きもある。18年に分娩(ぶんべん)を休止した北村山公立病院(東根市)。「(リスクの高い患者も受け入れる総合病院なら)医師は最低でも3人、理想なら4人いないと、安全な産科医療は提供できない」(鎌塚栄一郎院長)という中、休止前の常勤医は前院長1人だった。現在は山形大医学部付属病院の派遣医師が週2日、健診のみを受け持つ。

 同病院の運営組合を構成する東根、村山、尾花沢、大石田の4市町の昨年の出生数は約600人。この数のお産をどう担うのか。加わったのが、19年から県などが進める「産科セミオープンシステム」だった。おおむね妊娠33週までは近隣の診療所などで健診を行い、34週から産後1カ月は総合病院が担う制度だ。健診で北村山公立病院に通った人は、山形市の山形大医学部付属病院や県立中央病院などで分娩できる。妊婦が「共通診療ノート」を持つことで、これまでの状況を施設間で共有し連携する。同様のシステムに昨年分娩を休止した天童市民病院なども参加している。

 安全な分娩を担保する面からも、医師の働き方改革の面からも「医療の集約はやむを得ない。今後、産科だけでなく他の診療科でも進む可能性がある」と鎌塚院長は指摘する。ただ、「私たちが断ると、患者は山形市内まで行かないといけない。断らずに一度は診療することが信条だ」。4市町にとってなくてはならない存在である病院としての矜持(きょうじ)を語った。

 限られた人数で現場の医師は日々奮闘する。だが、医師不足の抜本的な解決を求める病院は多い。「個々の病院で対応するのは限界」「国、県が医師配置を主体的に定めるような対策が必要だ」。山形新聞が20床以上の県内全67病院を対象に行ったアンケートからは、悲痛な声が聞こえている。

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