明日につなぐ地域医療

第2部・病院が直面する課題(3) 新型コロナの影響

2021/12/2 15:35
置賜地域の自治体病院が準備したコロナ病床。院内感染を防ぐことを最優先に確保した

 山形新聞が20床以上の県内全67病院を対象に行ったアンケート調査で、新型コロナウイルス感染拡大の影響(複数回答)について答えた45病院のうち98%で患者数が減少したことが分かった。手術・検査の延期を迫られた病院は38%、ほかの診療の縮小を余儀なくされた病院は22%に上った。医療従事者の勤務態勢では91%が新たな労務が発生したと答え、新型コロナが県内病院に与えた影響の大きさ、医療従事者の負担の増加が浮き彫りになった。

 新型コロナの検査や治療に対応していない病院でも患者数は減少。新型コロナが医療従事者の勤務態勢に与えた影響(複数回答)では院内感染防止の徹底により長時間労働になったとする回答に加え、精神的負担の増加からメンタルヘルス対策が必要になったとの回答も複数あった。健康観察のため待機することになった職員や部署のフォローが負担になったとの回答もあった。

 コロナ禍で浮き彫りになった病院の課題を尋ねた項目(複数回答)では「感染症対策の強化」(82%)が最も多く、「医療資機材不足」(38%)、「看護師の確保」(31%)、「医師の確保」(29%)と続いた。

 検査・治療の双方に対応した病院からは「もともと本県は医療資源が豊富とはいえず、多発外傷や心臓血管外科など3次救急の機能維持に苦心した。感染症対応には人材、設備の備えが必要で、将来的に統合再編による資源集約が必要」との指摘もあった。

 コロナ患者の受け入れの多くは、高度医療を提供できる各地域の拠点病院が担ってきた。しかし、それ以外の回復期のみを受け入れてきた自治体病院などでも感染症まん延に備える動きがあった。

 新型コロナウイルスの感染拡大に備え、県内の自治体病院にもコロナ対応の病床を確保する動きが出始めてきた。県内の専用病床数は第5波まで重点医療機関10カ所で計237床(うち重症者用26床)の態勢を維持してきた。感染拡大を見据えて政府が増床の方針を示したため、県内は自治体病院の臨時的な増床に加え、専用病床が逼迫(ひっぱく)した際に療養者へ酸素投与を行う「酸素ステーション」で積み増し、最大280床程度に拡充する方針だ。

 置賜地域の自治体病院。1997年の開院時から70床を維持し、かつては分娩(ぶんべん)も取り扱った。団塊の世代が75歳以上となる2025年の医療需要や必要病床数に合わせ、病床削減や機能再編を一定のエリアで進める地域医療構想を踏まえ、20年4月には60床に減らした。全て回復期病床だが、救急や手術にも対応している。病床稼働率は7割程度で、経常収支ベースで赤字という。人口減少に加え、周囲の高齢者施設の機能充実によって稼働率は伸び悩みの状態が続く。

 この病院は内科や外科など五つの診療科があり、常勤医4人。公立置賜総合病院(川西町)や山形大医学部付属病院(山形市)などからの転院や、高齢者施設で肺炎を起こしたり、在宅医療で容体が急変したりした患者の受け入れも担う。

 コロナ禍で外来患者が減るなど病院経営は依然厳しい状況だが、この病院は流行期に備えたコロナ対応を急いだ。昨年12月、自前のPCR検査で陽性となった人を一時的に留め置くため、陰圧装置を備えた病床を確保した。現在は2床分の受け入れを可能とし、コロナ対応に当たる看護師の待機用2床分も設けた。実際に感染者の入院を受け入れた実績はないが、事務局長は「院内感染を防ぐことを最優先とした」と振り返る。

 コロナ対応では医師や看護師ら医療人材が治療に割かれ、他の診療科への影響なども懸念される。マンパワーが十分でない自治体病院など回復期病院は今後の感染拡大期に果たして感染症患者の受け皿になり得るのだろうか。さらに地域医療構想はコロナの影響を想定していない。今後感染症対応を考慮し病床削減や機能再編を考え直すのか。国はまだその方針も示していない。

 事務局長は「構想に基づき病床を減らせば、職員数も減らせると思われがちだが、コロナ対応は診療だけではなく、ワクチン接種への対応もある。感染が続く限り、今後も多くのマンパワーが必要となる」と不安を口にする。さらに「経営改善は当然重視しなければならないが、住民を守るための構想でなければならない。今後の病院運営を考えた場合、単に病床を減らす議論は成り立たなくなる」と続けた。

 県医療政策課は今後の病床の削減や機能再編について「国が(コロナ禍を踏まえ)地域医療構想の観点を含め、どのような方針を示すかが待たれる」とする。その上で「病院が個別に取り組むだけでなく、地域全体で病床再編の議論を丁寧に進める必要がある。現場への押し付けになってはならない」と課題を挙げた。

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