明日につなぐ地域医療

第2部・病院が直面する課題(2) 連携と効率化

2021/12/1 13:29
西蔵王高原展望広場から望む山形市街地。地域内での医療連携は重要と認識する病院が大半だったが、その手法については多様な意見があった

 山形新聞が20床以上の県内全67病院を対象に行ったアンケートで、現在の地域医療のどこに無駄があると思うか、集約できる要素があるかを尋ねた項目では、複数の病院が、高額医療機器の点在や医療機能の散在を挙げた。「同じような高額医療機器が各病院にある」「地域内でそれぞれ公立病院を運営していれば、通常の診療のほか、夜間・休日の救急態勢でも医師をはじめ医療人材、機器が必要で、各運営自治体からの繰入金を減らせない」との声も。「県立病院の統廃合」の提案もあった。

 集約化や限られた医療資源の効率配置を実現する手法の一つが「日本海ヘルスケアネット」(酒田市)のような地域医療連携推進法人。しかし、自ら参加して同推進法人を設立する必要性について聞いた項目では、慎重な回答が大半で、この質問に答えた35病院の60%が「必要ない」と判断した。それでも、同推進法人に参加しているか、設立準備中の病院以外の7病院が、将来を含めて「必要がある」と答えた。

 その理由は「人口減少に対応して地域に必要な医療・介護環境を堅持し、持続可能な地域づくりに資するため」「機能分担や病床規模の適正化を図るため」「患者情報の共有のため」「今後常勤医師、看護師が不足した場合、効果的に病院を運営するため」など。10法人が参加し、北庄内全体で介護までを見越した医療・福祉連携を図ろうとしている日本海ヘルスケアネットや、全国で初となる公立病院と民間病院の一体的な整備を進め、同推進法人の設立も目指している米沢市立病院と三友堂病院の事例については「動向を注視したい」など関心の高さがうかがえた。

 地域医療連携推進法人の設立に慎重な理由は「現状で地域内の機能分担、病院・診療連携ができている」が多かった。「同規模の病院が多い村山地域では施設間の調整が困難」「設立を検討する前に、地域の各病院の役割を明確にし、患者や診療科のすみ分けをするのが先」「設立のメリットが不明」などの意見もあった。同推進法人という手法は選択しなくても、地域医療を維持するには機能分化や集約化が必要と考える病院が多かった。

 一方で「集約し過ぎることによる地域医療の崩壊が懸念される」との指摘や、「無駄はなく、多くの面で不足している」(北村山公立病院)「地理的に当院しかないため、住民から幅広い診療の提供を求められている。医療連携の役割を明確にし、急病でも町民が安心して診療を受けられる態勢づくりが必要」(小国町立病院)との声もあった。

 地域医療の在り方は地域の将来像そのものの在り方と合わせて検討すべきとの視点の意見も。「町内には医療機関が当院しかなく、当院の縮小は患者の利便性を損ない、町に住み続けるのが難しくなることに直結する。今後の医療連携は住民の意向を十分聞き入れた上で行わなくてはならない」(西川町立病院)。「公立病院間の連携や再編・統合の協議は病院関係者だけでは進められない。行政の関わりが不可欠で県・市町の意見を踏まえた協議が必要」(寒河江市立病院)。「住民にとっては今まであった診療機能はこれからもあった方がいいに決まっている。住民が現状と将来をどう捉えるかにかかっている」との声もあった。

 同推進法人に限らず、地域内で医療連携する場合に望ましい枠組みを聞いた質問では村山、置賜、庄内、最上の2次医療圏内とする答えが多かったが、それより狭い「市と周辺の町」とする意見や、「県全体」との意見もあった。「赤字を抱えて人手も足りず、助けてもらう立場の病院からは、さあ私たちと手を組みましょうとは言えない」「県には第三者的立場で話を聞くのではなく、もっと主体的に引っ張ってほしい」と広く地域を見渡しながらの強力なリーダーシップを求める声もあった。

 ある病院の担当者は「病院の次の在り方を示されても、すぐには実現できない。その間にもどんどん人口は減少し、医療人材も減っていき、今支えている患者の手を離すこともできない」と漏らした。

 目の前の患者を救うため、住民に必要な医療を提供するため、新たな感染症への対応にも追われながら奮闘している医療機関の強い使命感と危機感が、アンケートの回答ににじみ出ていた。

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