明日につなぐ地域医療

第2部・病院が直面する課題(1) 医業収支

2021/11/30 09:48
山形新聞が20床以上の県内全67病院を対象に行ったアンケート。経営安定化が大きな課題になっていることが浮き彫りになった

 外来・入院診療、検査など医療行為によってもたらされた売り上げから、医療行為にかかった費用を差し引いた医業収支は、病院経営の指標とされている。山形新聞が20床以上の県内全67病院を対象に行ったアンケートで、2020年度の医業収支の項目に回答した28病院中、71%に当たる20病院が赤字だった。

 一般的に、救命救急やへき地医療など収益性の低い医療を担うことが赤字の要因になるといわれており、20年度は新型コロナウイルス感染拡大に伴う外来・入院患者の減少も追い打ちを掛けた。回答した病院で医業収支の赤字幅が最も大きかったのは県立中央病院の43億9600万円。県立河北病院の16億4千万円、公立置賜総合病院の16億1300万円が続いた。

 しかし、国や地方自治体から交付金や補助金が入ることにより、医業収支が赤字だった20病院中11病院が経常収支では黒字となっている。回答があった29病院分だけで、20年度に国や県、市町村から投入された公金は総額約130億円。各病院が抱える課題は何かを尋ねた項目(複数回答)で最も多かったのは「経営の安定化」で69%に上った。病院の経営状況を改善することは、病院そのものを存続させるだけでなく、国民・住民負担をこれ以上重くしないためにも必要といえる。

 一方、救命救急や高度医療に対応しながらも、10法人が参加する地域医療連携推進法人日本海ヘルスケアネット(酒田市)の核になっている日本海総合病院(同)は医業収支で12億600万円の黒字を確保した。医業収支に回答した28病院中、8病院は黒字だったが数千万~1億円程度の所が多く、日本海総合病院の実績は突出していた。

 2020年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で全国的に病院の外来・入院患者数が減り、医業収支が悪化した病院が多かった状況下で約12億円の黒字を確保した日本海総合病院(酒田市)。同病院はその理由を「08年に県立病院と酒田市立病院が統合・再編して地方独立行政法人としてスタートする際にあらゆる分野で行った業務改善・経費削減が体質として定着していることが大きい」と説明する。18年に認定された地域医療連携推進法人「日本海ヘルスケアネット」に参加する10法人が決算状況をすべて開示し合うことで、経営改善の具体的手法や課題も情報共有でき、日本海総合病院以外の参加法人の決算も改善が進んでいるという。

 山形新聞が20床以上の県内全67病院を対象に行ったアンケートで、病院経営に人口減少の影響があるかを尋ねた項目では、回答した35病院のうち74%が「ある」と答えた。収入減少や赤字が続いている要因を尋ねた項目では複数の病院が「人口減少による外来・入院患者の減少」と分析。同時に現在の診療を維持するための人件費を含めた経費削減が困難な状況を指摘し「このままでは赤字が拡大していく」「自治体病院である以上、不採算部門も担っていく必要がある」と続けた病院もあった。

 経営安定化のため、何が必要と考えるか尋ねた項目で複数病院から指摘があったのは「実態に見合った診療報酬の改定」と「交付金・補助金など公的助成」。「小児科など不採算診療科はやめざるを得ない。職員確保のために開設したはずの院内保育園も持ち出し額が大きく、見直しを迫られる」とする声もあった。「止まらない人口減少と高齢化の中で、病院同士が競い合い、個々に各診療科を維持し続けるのが既に限界に達していることは、医療関係者は皆分かっている」。村山地域のある病院関係者は、絞り出すように言った。

 【メモ】山形新聞の独自アンケートは、20床以上の県内全67病院を対象に9~10月に文書で行った。46病院が回答し、回収率は69%。

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