明日につなぐ地域医療

第1部・なぜ、連携は必要か(6) 人口減の先に[中]

2021/10/7 12:58
限られた人数で日々の業務をこなす最上町立最上病院の看護師。看護人材の不足は最上地域で顕著になっている

 あと数人いたら-。看護師不足にあえぐ最上地域で、2人の看護師は同じ思いを口にした。真室川町立真室川病院の井上典子総看護師長と、最上町立最上病院の奥本和枝総看護師長だ。慢性的に人手不足ではあったが、新型コロナウイルスの影響により仕事はさらに増えた。限られた人員で、職員それぞれのワーク・ライフ・バランスも考慮しながらの勤務ローテーションの作成は、師長クラスの頭を常に悩ませている。

 町立真室川病院の看護師は総勢36人。井上総看護師長を除き、24人が病棟、11人が外来を担当する。1人は2017年に開設した県看護協会訪問看護ステーション新庄サテライトまむろ川に派遣している。毎月半ばに職員から希望を募り、月内に勤務表を配布する。各自のライフスタイルを尊重し、「希望はほぼ100%受け付ける」(井上総看護師長)。

 立ちはだかるのが「72時間ルール」だ。月平均の夜勤時間が72時間を超える月が続くと、入院基本料が減額されてしまう。同病院は夜勤が月9日を超えないよう調整しているが、突発的に10日になってしまうこともあるという。夜勤日数と間隔、職員の休み希望、経験値に見合った配置-。考えなければならないことは多い。年齢や体調などの理由で、全員が9日フルで夜勤に入れる訳ではない。急病などで別の人が夜勤に入った場合、月9日を超えないようにする勤務調整に、膨大な時間を割かれる。まるで難解なパズルだ。

 近年、増えた仕事が二つある。一つが住み慣れた地域で自分らしい最期を迎えるための「地域包括ケアシステム」推進に伴う、退院支援に向けた調整だ。ケアマネジャーや介護施設職員、患者家族との打ち合わせは、1人の患者につき短くても30分。施設入所、ひいては在宅での介護に向けた円滑な支援のため、町立真室川病院では看護師10人以上がケアマネジャーの資格も取得した。井上典子総看護師長は「重要な仕事であると認識はしている」と語る。だが、調整業務が終わってから後片付けや翌日の準備に追われる職員の疲労も感じている。

 もう一つは新型コロナウイルス感染症対策。発熱外来を設けて専用スタッフを配置したため、外来担当は1人減で通常業務に当たる。病棟での面会禁止を受け、患者の状況を随時家族に説明し、着替えなどの荷物や伝言を受け付ける。これまでのように病室で見舞うことができない家族を思っての対応だ。

 さらに「ぎりぎりの状態」と漏らすのは、最上町立最上病院の奥本和枝総看護師長。正職員24人、会計年度任用職員・パート14人の態勢で切り盛りする。病棟担当は24人で、このうち夜勤は正職員17人がこなすため、月10日は入らなければいけない。急病で誰かが休めば「72時間」はすぐオーバーしてしまう。夜勤に気を配るあまり、反対に日勤がほぼ会計年度任用職員になってしまうこともあるという。

 「夜勤に入れる人があと3人いれば…」と切実に語る。看護師不足に歯止めをかけようと2017年、最上8市町村などが連携し、管内病院で一定期間勤務すると、返済免除になる修学資金制度を設けた。だが、これを活用して同病院に来た人はいない。奨学金を返済してでも他病院に行く道を選んだ人もいた。幸い、昨年から2年連続で新規採用に恵まれた。就職ガイダンスで声を掛け、病院見学や先輩看護師との昼食会に誘い、やっとの思いで見つけた人材だった。

 「せめて、町内病院と介護施設で異動できる仕組みがあれば、急な人手不足はしのぐことができるかもしれない」。地域医療連携推進法人「日本海ヘルスケアネット」(酒田市)の人材派遣の仕組みをうらやましく思った。

 人材不足は医師、看護師に加え、地域包括ケアシステムの一端を担う介護施設でも顕著だ。県最上総合支庁は16年、最上地域の介護施設124事業所を対象に採用状況のアンケート調査を実施した(回収率72.6%)。このうち約7割が人手不足を感じていることが分かった。さらに正職員が毎年減り続け、臨時職員で補う実態も明らかになった。危機感を抱き、翌17年、関係機関が「もがみ介護人材確保推進ネットワーク協議会」を設立。学生への講話や職業体験などを行い、将来的な人材確保に取り組んでいるが、まだ種をまいている途中だ。

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