明日につなぐ地域医療

第1部・なぜ、連携は必要か(4) 県内の医療提供の特徴

2021/10/4 12:42

 2025年には第1次ベビーブーム(1947~49年)に生まれた「団塊の世代」が全員75歳以上の後期高齢者となり、社会保障費の大幅増加が懸念されている。「2025年問題」とも呼ばれ、それまでに病院や病床を適正に配置し、社会保障費を抑制しながら、地域に必要な医療体制を構築することが大きな課題として横たわる。

 各都道府県は25年に必要な病床数などを定めた「地域医療構想」を策定、重症者向けの過剰な急性期病床から、リハビリに取り組む人たち向けの回復期病床への転換などを進めている。稼働していない病床や利用率が低い病床を有する病院は診療機能に重点を置いたり、病床の規模を減らしたりする対応も求められる。

 19年9月。厚生労働省が再編統合の議論が必要な全国424の病院名を初めて公表し、全国の公的・公立病院に激震が走った。県内では県立河北、天童市民、朝日町立、寒河江市立、町立真室川、公立高畠、酒田市立八幡の7病院が挙げられた。八幡病院は既に県・酒田市病院機構に移管統合され日本海八幡クリニックとして再編統合されていたし、他に病床の転換方針を決めていた全国の病院も含まれていた。

 厚労省が基にしたのは17年時点のデータ。足元のデータではなかったが、あえて公表に踏み切ったのは、25年が迫る中、進まない地域医療構想に基づいた再編統合などの議論を加速する狙いがあった。

 当初は将来の医療需要の動向などを踏まえ、公表から1年後の20年9月までに結論が求められていた。県も構想に基づき県内4地域で議論を促したが、公表から半年もたたず、コロナ禍が医療現場を襲った。議論は休止となった。

 県医療政策課は「短期的な視点では新型コロナの急拡大に備えた病床が必要かもしれないが、中長期的には再編統合の議論は避けては通れない」と危機感を強める。「有事を見据えて病床を維持し続けることは、いずれ病院経営にも影響を及ぼす」

 県内の医療提供体制はどんな特徴があるのか。人口10万人当たりの医師数は表(1)の通り。2次医療圏では村山地域が唯一全国平均を上回る一方、最上地域の医師不足が深刻な状況が続く。産科や小児科など特定診療科の医師も足りず、医師と診療科の双方で偏在が課題となっている。

 県内で全病床数に占める自治体病院の病床数の割合は2014年時点で47.2%に上り、全国1位。公立病院が地域医療の中核を担っていることが分かる。一方、人口10万人当たりの医療施設数は表(2)の通り。病院(20床以上)は全国平均を下回るも、一般診療所(20床未満)は上回り、地域に根差した開業医が多い傾向だ。

 厚労省に再編統合の必要性を名指しされた朝日町立病院。実名公表より前に、同病院は18年5月に一般病床を60床から50床に減らし、同年12月には50床のうち10床を地域包括ケア病床へと転換していた。伊藤博美事務長は「朝日町は高齢化率が40%超。地域包括ケアを推進する町の方針に沿い、先手を打って病床を転換してきた」と話す。

 コロナ禍で自治体病院は経営の厳しさを増している。患者の診療控えなどで好転する要素は見つからない。新型コロナなど新興感染症がまん延し、診療科によっては加速度的に医師不足も進んでいる。本県の地域医療の中核を担う自治体病院はこの先、存続できるのだろうか-。

 県医療政策課は「再編統合の議論は、まさに『総論賛成、各論反対』。経営する自治体は今のままでは経営的に厳しいと理解しつつ、実際に診療体制の縮小となると懸念を示す」と指摘。「各病院は努力し、病床の削減や機能転換を進めている。それらを2次医療圏ごとにトータルで考えられるかが重要」と続ける。

 自治体病院は住民のため診療を続ける責務があり、大半が経営改善に向けて待ったなしの状況にある。伊藤事務長は、模索が続く自治体病院関係者の思いを代弁した。「人口減少が進む中、住民の医療ニーズを把握しつつ、診療体制をどう維持していけるか」

◆医療圏 住民への医療提供を完結する地域的単位として各都道府県が区分する。1次医療圏は基本的に市町村が単位。2次医療圏はおおむね人口20万人前後の区域を基本とし、県内では4地域(村山、置賜、最上、庄内)を設定している。3次医療圏は2次医療圏を合わせた区域で先進的、専門的な特殊医療を提供する区分となり、基本的に都道府県の区域が単位。

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