談話室

▼▽以前の勤務地で、決まって酒宴の締めを任されるご仁がおられた。その方は登壇するとうやうやしく「正式な万歳三唱」の方法を説くのであった。「直立不動の姿勢から、右足を一歩斜め前に、両腕は垂直に上げて…」

▼▽注意事項として、手のひらは必ず内側に向けるよう強調された。「前に向けたら“お手上げ”になってしまいますから」。ここで笑いが起きるのもお決まりだったが、ご当人は真面目に「明治政府の『万歳三唱令』で定められたやり方です」。そう言われ皆が得心していた。

▼▽この方法は1990年代半ばに全国に広まったとされる。ところが「万歳三唱令」なるものは全て架空だった。元は酒席で生まれた一発芸で、政府から出されたという文書も偽物。後に、熊本県内に住む人物らが、自分たちが創作したと地元紙に名乗り出て詳細を告白した。

▼▽衆院が14日、解散され、議場に万歳三唱が響いた。恒例の光景だがなぜやるのか確たる説はない。コロナ禍でなお苦境にある国民にすれば、万歳どころではないというのが真情だろう。来るべき総選挙は、暮らしがお手上げにならないようにとの切実な願いが票に託される。

(2021/10/15付)
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  • 10月15日
  • ▼▽以前の勤務地で、決まって酒宴の締めを任されるご仁がおられた。その方は登壇するとうやうやしく「正式な万歳三唱」の方法を説くのであった。「直立不動の姿勢から、右足を一歩斜め前に、両腕は垂直に上げて…」 [全文を読む]

  • 10月14日
  • ▼▽越中富山の薬売りは有名だが、始まりは江戸城内で起きた珍事に由来する。ある大名が突然腹痛に襲われた。居合わせた富山藩第2代藩主・前田正甫(まさとし)が携帯していた妙薬「反魂丹(はんごんたん)」を与えたところ、たちまち治まった。 [全文を読む]

  • 10月13日
  • ▼▽王子タミーノは囚(とら)われの姫パミーナを助けるため、試練の旅に向かう。お供するのは、ワインと乙女が大好きなお気楽猟師パパゲーノだ。モーツァルトが、35歳で早世する直前に仕上げた最後のオペラ「魔笛」である。 [全文を読む]

  • 10月12日
  • ▼▽前置きが長い人は嫌われがちだが、例外もある。7日に亡くなった古典落語の名手柳家小三治さんは噺(はなし)に入る前の「まくら」と呼ばれる導入部に定評があった。身の回りの日常も名人にかかれば極上の笑い話に変わる。 [全文を読む]

  • 10月10日
  • ▼▽「私はファイターだ。リングの中でも外でも戦い続ける」。世界6階級を制覇したプロボクサー、マニー・パッキャオ氏が引退した。フィリピンの貧しい農家出身で上院議員。次なる戦いは来年5月の大統領選である。 [全文を読む]

  • 10月9日
  • ▼▽このご時世で最近はとんと機会がなくなったが、以前首都圏に出張するたびに気になっていたことがある。エスカレーターに乗る際は左側に整然と並ぶ。急ぎたい人は空けてある右側を歩いて移動する。そんな慣習だ。 [全文を読む]

  • 10月8日
  • ▼▽レジで知り合いの店員さんに「あす受賞しますかね」と声を掛けられた。「ここ何年か振られているし」と返しつつ、吉報を内心願った。一昨日の夕方に入った書店。誰とはあえて言わなくとも、互いに了解している。 [全文を読む]

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