談話室

▼▽ノンフィクション作家の後藤正治さんに「私だけの勲章」という作品がある。登場するのは、場末のネオン街をギター片手に流して歩く歌手や、黒子役に徹する選挙参謀。晴れの舞台にはあまり縁のない男たちである。

▼▽プロ野球阪神の「代打の切り札」川藤幸三さんを、バッティング投手として12年余り支えた球団職員も登場する。このような面々を取材対象に選び、一冊にまとめた動機を、後藤さんはこうつづっている。「『影』に位置する人々への共感がひそんでいるからなのであろう」

▼▽東京五輪では日本選手団から連日ヒーロー、ヒロインが生まれている。活躍には心が弾む。一方で、そうはならなかった選手たちも気になる。例えば重量挙げ女子のベテラン三宅宏実さん。記録なしに終わった後「やり切った」とさばさばした表情を見せ、引退を表明した。

▼▽カヌー・スラローム男子の羽根田卓也さんは2大会連続のメダルを逃したが「これだけ注目し、応援してもらった東京五輪に感謝したい」。たとえ表彰台は遠かったとしても、コロナ禍の中で重圧に耐え、鍛錬を重ねてきた胸には「私だけの勲章」が輝いているに違いない。

(2021/07/28付)
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  • 7月28日
  • ▼▽ノンフィクション作家の後藤正治さんに「私だけの勲章」という作品がある。登場するのは、場末のネオン街をギター片手に流して歩く歌手や、黒子役に徹する選挙参謀。晴れの舞台にはあまり縁のない男たちである。 [全文を読む]

  • 7月27日
  • ▼▽「日本の公文書整理の実態は余りに粗雑である。諸外国では文明国、後進国の別を問わず公文書館が設立されている場合が多い」。日本学術会議は1959年、岸信介首相に勧告を出し国立公文書館の設置を切望した。 [全文を読む]

  • 7月26日
  • ▼▽オーストラリアでユーカリの葉から金の微粒子が見つかったことがある。同国の研究チームは、それが地下の鉱脈にある金と同じ成分だと確認。地中深くまで張った根から水と一緒に吸い上げられたことを突き止めた。 [全文を読む]

  • 7月25日
  • ▼▽極限まで鍛えた肉体を世界のアスリートが競い合うのが五輪だ。本格化した競技の中継を見るとそのことを実感する。だが20世紀前半には建築や文学、音楽、絵画の成果を審査する「芸術競技」も正式に行われていた。 [全文を読む]

  • 7月24日
  • ▼▽戦時中の文部大臣が士気を鼓舞しようと発案し、首都圏の77校約2万5千人が銃剣を手に行進した。学生たちを戦場に送り出す出陣学徒壮行会が東京都の明治神宮外苑競技場で開かれたのは1943年秋のことである。 [全文を読む]

  • 7月23日
  • ▼▽バブル景気の時代、若輩には普通来ない東京都心のビル設計の仕事が舞い込むなど建築家としての出発は華やかだった。しかし、1990年代にバブルがはじけると一転、以降の10年間は東京での仕事がゼロになった。 [全文を読む]

  • 7月22日
  • ▼▽満たされぬ心を抱え、ぎらつく目をした男たちが銀幕を駆ける。一匹狼(おおかみ)の刑事(松坂桃李さん)と凶悪組織の死闘を描く映画「孤狼(ころう)の血 LEVEL2」である。先行上映の劇場で2時間19分、目がくぎ付けになった。 [全文を読む]

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