談話室

▼▽なかなか手に入らないものほど価値を感じるという人間の心理は「希少性の原理」などと呼ばれる。「限定モデル」「地域限定商品」といった惹句(じゃっく)だけで思わず手が伸びてしまうのにはちゃんとした理由があるわけだ。

▼▽これは景観にも当てはまる。先週末飯豊町の白川湖を訪れ、それを再認識した。目当ては、雪解け水が流れ込みダムが満水となるこの時期に限って見ることができる「水没林」。深緑の水面から木々が生えているような不思議な光景を間近で堪能すべく、カヌーを浮かべた。

▼▽若葉を芽吹かせたヤナギの間を縫って静かに進む。樹木の生命力を感じながら森を自由に移動する感覚は残雪トレッキングにも似る。途中マスクをしたままであることに気付き、急いで外して深呼吸。気配を消して艇を滑らせると、木をつつくアカゲラの真下まで近づけた。

▼▽霧が出る日の早朝はより幻想的という。季節、時間、天候と求められる条件が多いほど出合う確率は下がるが、感動の度合いは増す。帰路、水を湛(たた)えた田んぼに青い空が映っていた。足元に蒼天(そうてん)を見る体験が都会でできようか。季節限定の田園風景も観光資源に昇華し得る。

(2021/05/18付)
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