談話室

▼▽赫々(かっかく)たる戦果を上げようが、世で権勢をほしいままにしていようが容赦ない。ダンテの長編詩「神曲 地獄篇(へん)」は、著名な存在があの世では逆に責め苦に遭う様を描く。トロイ戦争のオデュッセウスとて例外ではない。

▼▽長年の攻撃にも屈しない敵に一計を案じ、城を陥落させた英雄だ。巨大な木馬を造って中に兵を入れ、敵を欺いて城内に忍び込ませたその作戦は「トロイの木馬」として知られる。「神曲」ではこれが神の怒りを買い、オデュッセウスは業火に焼かれるという神罰を受ける。

▼▽独裁者やその取り巻きとして権力を振りかざしていても、いずれは報いを受ける。そう感じさせる存在は、現代ロシアにもいる。北極圏の刑務所で突然死したナワリヌイ氏の「遺体を引き渡してほしい」。そんな母親の訴えを「14日かけて化学検査を行う」と拒否した輩(やから)だ。

▼▽母が遺体安置所に入ることも認めなかった。人を人とも思わないようなやり口は枚挙にいとまがない。侵攻先のウクライナでは昨今優勢が伝えられるとはいえ、自軍の膨大な犠牲を顧みない無謀な戦術のようだ。開戦から2年、独裁者の心が業火に苛(さいな)まれることはないのか。

(2024/02/23付)
[PR]
最新7日分を掲載します。
  • 2月23日
  • ▼▽赫々(かっかく)たる戦果を上げようが、世で権勢をほしいままにしていようが容赦ない。ダンテの長編詩「神曲 地獄篇(へん)」は、著名な存在があの世では逆に責め苦に遭う様を描く。トロイ戦争のオデュッセウスとて例外ではない。 [全文を読む]

  • 2月22日
  • ▼▽時折袋から取り出しては眺めている。山形市東部から望む山並みを、横125センチに収めた折り畳み式の展望図である。山形盆地の西端から新緑の丘陵が高度を増していき、奥には残雪を頂いた朝日連峰が描かれている。 [全文を読む]

  • 2月21日
  • ▼▽日本語学の泰斗・中村明さん(鶴岡市出身)が著した「笑いのセンス」は、言語表現を主題にしているが、前提として笑いそのものの分類と考察に紙幅を割く。氏によれば、笑いは「直接的」「間接的」に大別される。 [全文を読む]

  • 2月20日
  • ▼▽「日本霊異記(りょういき)」は、平安前期に成立したわが国最古の仏教説話集である。善行にせよ悪い行いにせよ、報いが巡り巡って自分の身に降りかかった因果応報譚(たん)を集めた。その中に、子どもを顧みなかった母親の話がある。 [全文を読む]

  • 2月19日
  • ▼▽当事者の口から語られる真実に、改めてやるせなさが募った。8年前に取材した当時の記憶だ。演台には北朝鮮拉致被害者の蓮池薫さん。庄内県勢懇話会に招かれ「夢と絆 拉致が奪い去ったもの」と題して講演した。 [全文を読む]

  • 2月18日
  • ▼▽ドローンによる空撮だろう。雪道でランニングをする男性の姿をカメラが追い続ける。「2021年1月17日にモスクワに帰る。そこで会おう」。映像に重なるのは男性の独白。直後、道は二股に分かれ彼は左に進む。 [全文を読む]

  • 2月17日
  • ▼▽人生の哀歓を自然体で捉えた映画。こう書いたら格好つけすぎか。アキ・カウリスマキ監督はどこかとぼけた雰囲気の映像を通じ、庶民の生きざまを伝える名匠だ。7年前に引退宣言した際は多くのファンが惜しんだ。 [全文を読む]

[PR]