太郎集落に差しかかると、吉野川は左に急カーブする。その上をまたぐ旧県道山形南陽線(現在は市道)にあるのが雨留井戸橋だ。1935(昭和10年)完成のコンクリート橋で、長さ13.2メートル、幅4.6メートル。長い年月風雨に耐えた姿は風格さえ感じさせる。
雨留井戸の由来について「かつては雨留井戸と呼ばれる水場があった」と語るのは吉野文化史研究会元会長の川合芳吉さん(88)。大雨が降っても濁らないきれいな井戸で、川合さんが小学生の頃、よくくみに行かされたと笑う。読み方は「うるいど」。橋名板に「あめと□□□し」(□は欠落、いどば?)とあることを伝えると「当時のお役所の間違い」と教えてくれた。
雨留井戸橋のすぐ上流に、山形南陽線改良工事で新たに建設された明神橋(83年完成)がある。名前の由来は隣接している神社「明神様」。昔は氾濫することの多かった吉野川が流れの方向を変える位置に鎮座し、集落の守り神として住民の心を一つにする役割を担っていたという。
北の山形方面へ、南の宮内方面へと車が通り抜ける明神橋の傍ら、雨留井戸橋周辺にはゆっくりとした時間が流れている。
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