鶴岡市街地南東部に位置する千石町と、新興住宅地の桜新町をつなぐ藤原橋。長さ38.4メートル、幅4.5メートルの小さな橋だが、橋の周辺には新内川沿いの散策路が続き、散歩やジョギングを楽しむ地元住民らが行き交い、子どもたちの遊び場ともなっている。
藤原橋がある地区は、かつては斎(いつき)村遠賀原(おがわら)字温海田藤原と呼ばれ、橋の名前はここに由来する。藤原集落は現在の千石町の一部。橋の近くには藤原安産地蔵尊と、現在は枯れてしまったが国の天然記念物に指定されていた大ケヤキがあることで知られていた。
数十年ほど前まで、藤原集落は田んぼに囲まれていたという。橋の近くに住む小林勇さん(89)は「付近の田んぼに水が張られると、カエルの鳴き声がうるさいくらいに聞こえたものだ」と話す。小林さんが子どものころ、川幅は現在よりも狭く、橋は木の板を渡しただけの簡素なものだったといい、「子どもたちは橋のそばでカジカを捕ったり“雑魚しめ”をして遊んだ」と振り返る。
「千石町藤李(とうり)町内会」会長で、農業五十嵐林一さん(78)によると、かつては橋のたもとに馬の足洗い場があり、農家の人たちが一日働いた馬を川の水で洗っていたという。現在は、近くにある満天橋や長者大橋を使うため、藤原橋を渡る機会は減っているというものの、「地元の人たちの生活に根付いた橋であることは変わらない」と笑顔を見せる。
橋は1964(昭和39)年にコンクリート製に架け替えられ、74(同49)年、現在の橋に。周辺の風景は変わっても、子どもたちの遊ぶ声が響く様子は今も変わらない。
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