米沢市万世町梓山を通る国道13号から東に10メートルほど入った場所に架かる水石橋。ひっきりなしに車が行き交う国道と違い、地元住民以外の車が通ることは少なく、どこかひっそりとした雰囲気が漂う。1986(昭和61)年1月に全長21.74メートル、幅6.2メートルの永久橋となった。
橋から川面までは、3メートル以上の高さがある。近くの釜田恵二さん(76)が小学生のころ、そこは格好の遊び場だった。当時の橋は木造の土橋。釜田さんは近所の子どもたちと一緒に、川遊びや魚取りをして遊んだことをよく覚えているという。
橋の下の川底は水深2メートルほどだったため、橋から川に飛び込んで遊ぶこともできた。それが当時の子どもにとってはひそかな自慢の一つで、川に飛び込めなければ一人前と認めてもらえない雰囲気もあったという。「今から思えば危ない遊びをしていた」と釜田さん。その川もいつしか水量は少なくなり、子どもたちの歓声は消えてしまった。
橋の100メートルほど下流にはかつて、丸太3本を両岸に渡しただけの橋が存在した。川の右岸側はキノコの群生地で「近くの人がキノコ採りのために川を渡ろうと架けたのだろう」と釜田さん。人が渡るには十分な強度で、「人は丸太の橋、荷車は水石橋」と使い分けていた。その丸太の橋も数十年前の大雨で川に流され、その存在を示す物は今は何も残されていない。
橋は戦前、右岸側のけもの道につながっており、その道を歩いて山を越えると、高畠町上和田地区に行くことができた。その昔、その道を通って橋を渡り、上和田から梓山に嫁いだ女性もいた。両地区には縁戚(えんせき)関係にある人が多く、水石橋が結んだ縁を感じることができる。
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