大樽川と小樽川の合流地点から20メートルほど下流に架かる大樽橋。米沢市の田沢地区と舘山地区を結ぶとともに、米沢と福島県会津地方をつなぐ国道121号を支える。16世紀に米沢を支配した伊達輝宗が息子の政宗に家督を譲った後、隠居したとされる舘山城跡地に程近い。
1986(昭和61)年9月に完成、同年10月に供用を開始した現在の橋は長さ72メートル、幅15.5メートルの永久橋で、車の往来が絶えない。17(大正6)年建造の旧橋もコンクリート製だった。近くの高橋亮子さん(68)は子どものころ、旧橋の欄干の上をバランスを取りながら歩く近所のいたずらっ子を目撃。「その子は得意そうに歩いていたが、わたしは川に落ちるんじゃないかとハラハラして見ていた。今では考えられないが、当時はおおらかな時代だった」。近くの河原で泳いだり、橋周辺は子どもたちの格好の遊び場だった。
92年のべにばな国体を前に、会津方面から米沢方面への交通確保のため、国道121号や大峠トンネルの整備が進められた。傷みの激しかった旧橋の架け替え工事も80年から始まり、総工費7億4千万円をかけて現在の大樽橋が完成。地元住民らによる渡り初めも行われた。
舘山地区は県内屈指のリンゴ産地として知られ、橋の北東には真っ赤な実を付けたリンゴ畑が広がる。高橋さんは橋の右岸側で約30年前からリンゴ直売所を営む。「新橋が完成し、会津からのお客さんが増えた。何度も買いにきてくれる人もいて、ありがたい」。大樽橋は物流ばかりでなく、人と人の交流も支えている。
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