尾花沢市下柳渡戸(しもやなぎわたりど)にある県道銀山温泉線の下柳渡戸橋(全長62メートル、幅員10メートル)は、同市中心部から約15キロ離れた銀山温泉まで、観光客を運ぶ大型バスが、日に幾度となく通行する。春には、シバザクラが眼下に広がる新名所になっている。
かつて銀を産出し名をはせた延沢銀山。尾花沢市史によると、隆盛期に形成した「銀山町」が、西は「柳渡戸村」まで広がっており、人口は現在の尾花沢市に匹敵する約2万人だった。いまは「大正ロマンの隠れ湯街・銀山温泉」として知られ、全国から観光客が訪れる。
橋は同市街地から銀山温泉に向かって約10キロの地点にある。市は去年4月、市営路線バス・銀山線に、レトロ調の外観のボンネットバス「銀山はながさ号」を導入した。田園風景の中をゆっくりと走る姿は観光客に受けている。春先、バスが下柳渡戸橋上を通行する時、華やかなピンク色に染まった堤防が乗客の目に飛び込んでくる。橋から下流約300メートル区間に植栽されたシバザクラだ。
橋の近くに住む農業柳元鉄男さん(79)が、1999年に行われた災害関連の護岸工事に感謝して、一人で植栽や追肥、草取りなどを続けている。丹生川は、下柳渡戸橋の下流で右にほぼ直角に蛇行しているため、はんらんしやすかった。「堤防そばに田んぼがあり、河川改修前は、毎年のように大水による土砂被害に遭っていた」と柳元さん。「護岸工事への恩返しの気持ちで植え続けている」と話す。花の帯は年々延び、今では300メートルを超えるまでになった。
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