酒田市の升田地区と対岸にある貝沢集落を結ぶ貝沢橋は、1971(昭和46)年10月に現在の橋に架け替えられた。それ以前はやや下流部に木製の橋が架かっていたが、川が増水するたびに流され、周辺住民を苦しめたという。
赤く塗られた欄干が特徴のコンクリート橋(PC橋)で長さ90.5メートル、幅4.8メートル。下流側の橋桁に青く塗った送水管が敷設されている。
左岸の升田地区に住む村上孝弥さん(74)は「戦後、木材需要が高まり出すと、上流部の木が次々と切り出された。そのために洪水の頻度が増え、今の橋になる前は、何度か橋が流された」という。
地元建設会社の作業員として橋の土台工事に携わったという貝沢集落の村上喜八さん(69)は「以前は梅雨時の増水で橋が流されるとなかなか架け替え工事に入れず、しばらくは仮設の橋で対岸まで行き来していた」と振り返る。
八幡町史によると、日向川沿いの升田、泥沢、赤剥(あかはげ)など9カ村が合併し1889(明治22)年に誕生した旧日向村にとって、橋の建設費や、洪水で流失した橋の修理費は大きな財政負担となった。そのため村は飽海郡に対し郡費による建設を願い出て、1918(大正7)年までに貝沢橋など4橋が架けられたという。
「対岸の小学校に通っていたころ、大雨になると『家に帰れなくなるから』との理由で、貝沢の子どもだけを早退させてくれた。勉強嫌いな子どもには雨がうれしい時もあった」。喜八さんはそう言って、にこりと笑った。
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