日向川の最下流に架かる遊佐町比子の栄橋(全長125メートル、幅3メートル)は、中央を境に左岸側がコンクリート製、右岸側が木製という独特の造り。町の担当者は「全国的にも珍しいのでは。ちょっと恥ずかしいですけどね…」と話す。
もともとは全て木橋で、1956(昭和31)年に架けられた。なぜ、今のような形になったのか。地元では一時、左岸側の酒田市はコンクリート橋を造ったが、右岸側の遊佐町は財政難のために木造にしたという話がまことしやかに広まった。しかし、栄橋は全体が遊佐町内にある町道で、うわさは事実ではない。
真相はこうだ。前町議会議長の高橋信幸さん(70)=同町当山=によると、74年ごろの大水で橋の左岸側だけが流され、国の災害復旧事業で直すことになった。だが原形復旧が原則。流された半分だけを当時の基準に沿ってコンクリート橋として架け直したものの、残りは木橋を残した。
コンクリート部分と木橋には1メートル弱の差がある。町によると、河川管理者の県が洪水に備え、コンクリートの橋脚を高くするように指導したためだという。
64年の新潟地震でも損壊した。当時高校生だった団体職員本間克修さん(63)=同町比子=には忘れられない思い出がある。停電で暗闇の中を自転車で下校中、橋の一部が崩落しているのに気付かずに進み、自転車ごと川に落ちた。本間さんは自力で橋脚を登り、自転車はゴムひもで引っ張り上げた。
木の部分は腐食が進んだため、高欄を鉄パイプで補強。新しく架け替えると4億円ほどかかるといい、現時点では予定はない。昔の姿のまま踏ん張り続ける栄橋の姿を一度、見てみては。
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