酒田市穂積と宮内を結ぶ旧国道7号の日向橋。県道となった今も酒田市と遊佐町方面をつなぐ幹線道路として多くの車が行き交っている。
現在のコンクリート橋(トラス橋)は1974(昭和49)年に造られた。全長139.1メートルで、幅6メートルの車道と、両側に幅2メートルの歩道が整備されている。橋の下流の右岸には日向川鮭(さけ)漁業生産組合のふ化場が見える。大場昇組合長によると、日向川には1909年からふ化場があり、サケ漁自体は江戸時代から続いている。「昔は1万匹ほど遡上(そじょう)してきたが、今は3千匹ほど。ふ化技術を向上させ、また1万匹が戻ってくる川にしたい」と意気込む。
初代の橋は、1876(明治9)年に架けられた木造のつり橋。洪水になるとしょっちゅう流された。当時の子どもたちは毎年6月、「橋が丈夫になるように」との願いを込め、菖蒲(しょうぶ)で橋をたたいていたという。交通量は多く、農耕馬や乗り合いバス、飛島の海産物を売る“いさばや”、便利屋などが頻繁に往来。橋のたもとには料亭や茶屋が並び、にぎわいを見せていた。
その後、交通量がさらに増えたため、鉄骨のアーチ形のつり橋に架け替えられた。その当時は舗装されていない砂利道で、ミニバイクで橋を渡って通勤していたという南遊佐コミュニティ振興会の土門智会長(67)=酒田市宮内=は「砂ぼこりはひどいし、道ががたがただからバイクの後ろにくくりつけた弁当が落ちてなくなっていたことがしょっちゅうあった」と笑う。
日向橋は鳥海山がきれいに見えるポイントでもある。住民にとってはいつになっても自慢の場所だ。
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