やまがた橋物語

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日向川編[1]

◆黒瀬橋(酒田)

黒瀬橋(酒田)の写真 対岸にあった社宅から発電所に通うために架けられた黒瀬橋=酒田市升田

 豊かな水量に恵まれた日向川(にっこうがわ)水系は、電気使用量の増加に合わせて早くから水力発電による電源開発が進められてきた。1954(昭和29)年に電力供給を始めた黒瀬発電所(酒田市升田)もその一つ。近くの黒瀬橋は、対岸にあった社宅から発電所に通う社員のため、発電所完成前年の53年に架けられた。

 黒瀬発電所は、合金属の製造を手掛けていた鉄興社(現日本重化学工業)が自家用発電所として建設し、55年に東北電力に譲渡した。72年2月に無人化されたが、それまでは年間を通して7~8人の社員が常勤し、交代制で最大出力7千キロワットの電力を供給していたという。

 黒瀬橋下流の貝沢集落に住む村上保さん(85)の母親は、黒瀬発電所の社宅で食事を作る仕事をしていたという。「近くにも酒田第1発電所(貝沢発電所)があり、社員が家に下宿していたことがあった。知り合いがいる社宅に遊びに行くと、当時、貴重だった真空管ラジオを見せられて『この中で小さな人間が話しているんだ』とちゃかされたこともあった」と懐かしそうに振り返る。

 鉄筋コンクリート造りの黒瀬橋は、全長50メートル、幅3.6メートルの堂々とした構え。日向川の増水にも耐えられるように川の中ほどに厚くコンクリートで固められた頑丈な橋脚が立ち、鋼製の橋桁を支えている。両岸の親柱には雷をイメージさせるモニュメントが飾られ、電源開発とともに誕生した橋の歴史を物語っている。

2011/06/29掲載
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