素朴な雰囲気の最上町赤倉温泉を流れる最上小国川には、約600メートルの区間に四つの橋が架かる。最も上流にあるのが、ことしが架設28年目の「湯の原橋」だ。
もともとは1970(昭和45)年、左岸にオープンした「湯の原荘」(現わらべ唄の宿 湯の原=柴田真利社長)が、食材や宿泊客の手荷物を運ぶために架けた橋だった。直径30~40センチの木材2本を針金で縛っただけで、長さ20メートルほどの丸木橋。柴田社長は「宿泊客からこんな橋を渡って泊まるのは初めて。いい思い出になったといわれた」と苦笑し、振り返る。冬季間、橋が凍結し、従業員が滑って川に落ちることもあった。
大雨のたびに流されるため、丸木の両端のうち一方をロープで岸につないだ。水かさが減ると、岸辺に押し流されていた丸木を戻した。72年、自費で架けた木橋(全長約20メートル、幅2メートル)も流出。永久橋架設を近くの旅館2軒とともに要望し続け、町が82年、防災上の観点から鉄筋コンクリートの橋を建設した。全長65メートル、幅6.2メートル。
柴田社長は「流出の心配がなくなり、旅館経営に夢と希望を与えてくれた」と感謝する。橋の名前は字名の「湯の原」から命名された。
今では大型バスやマイカーがひっきりなしに通る。橋の近くにある屋根付き専用ゲートボール場には、橋を渡って町内外の愛好者がプレーに訪れる。これも永久橋による“誘客効果”といえそうだ。
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