国道48号沿いから、車が通れない細い坂道を下ると、大滝遊歩道橋(全長27.1メートル、幅2メートル)がある。その名の通り、近くで豪快な水しぶきを上げる「大滝」を中心とした観光用の橋として1987(昭和62)年に架けられた。新緑や紅葉、雪化粧した木々に囲まれた大滝の風景を楽しみに四季を通じて多くの人が訪れる。
地元住民によると、付近では明治30年代から炭焼きが盛んに行われており、橋はもともと、川向かいの里山で作った炭を集落に運ぶために架けられた。当時は川の間にある巨大な岩を中間点にした2本の木造橋だったが、台風が来るたびに流されていたという。近くでドライブインを経営する清野博昭さん(61)は「幅は60センチほどしかなく、子ども5人ぐらいで渡ると簡単に揺れた。それが面白くて子どもの時はわざと揺らして遊んだ」と懐かしむ。
地元の関山愛林公益会長の清野栄三さん(74)は「石油などの普及で炭焼きは次第に行われなくなり、橋は戦後ごろから観光用として使われ始めた。神町に来た進駐軍の隊員が夏場に涼を求めて訪れたこともあった」と振り返る。
現在の橋は鉄骨製で、朱色と三角形の骨組みの「トラス構造」が目を引く。市商工観光課によると、大滝周辺には年間延べ約37万人が訪れるという。「お盆期間中は特ににぎわう。訪れた人は橋を渡り、河原でバーベキューをしたり、水浴びをするなど思い思いに過ごしている」と博昭さん。時代の流れとともにその目的を180度転換した橋は今、与えられた役目をしっかりと果たしている。
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