旧及位集落と田代集落を結ぶ上田代橋。以前はつり橋だったため除雪車が渡ることができず、田代集落の住民は冬季間、集落内の道路の雪を踏み固めて行き来していた。
昭和初期、旧及位村(現真室川町)は相次ぐ冷害に見舞われた。困窮した農村を立て直すため1934(昭和9)年、国が救済土木事業として取り組んだのがつり橋建設。長さ約20メートル、幅約4メートル。2トン車までは通行できたといい、半世紀の間、住民の生活道路として利用されてきた。
田代集落の高橋靖弘区長(73)は「住民と技術者が数年に一度、つり橋の枕木や敷板を交換し、ボルトを締め直す作業に当たった」。妻洋子さん(69)は「結婚式のためタクシーで渡り始めた時、つり橋が重みでゆがんだ。一瞬、車が前に傾き、運転手がびっくりしたことを覚えている」と笑顔で振り返る。
75(同50)年8月の水害で一部が壊れたが、補修工事をして行き来した。住民たちの運動がようやく実り84年、現在の上田代橋が整備された。つり橋の下流10メートルで全長約40メートル、幅5メートル。
高橋さんは「永久橋の建設と町道の舗装で、ようやく集落内にも除雪車が来るようになった。自宅から車で出掛けることができるようになった」としみじみと話す。田代集落の歴史を見つめてきたつり橋と永久橋は、今も並んでたたずむ。
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