遊佐町遊佐の国道345号上にあるそねた橋(全長67メートル、幅16メートル)。橋のそばにある漆曽根集落は、冬になると雪の吹きだまりに覆われ、かつては他地区に移動するのも大変だった。そこで住民は毎年、冬季間のみ月光川に木橋を架けて通学や買い物などに利用した。
この集落は上、下曽根田地区からなる。周囲は田圃が広がり遮断するものがなく、日本海から猛烈な風雪が集落に直接、吹きつけてくる。積雪の多い時は、高さ3メートルほどの家々の雪囲いの上にまで吹きだまりができるほどだ。漆曽根地区区長の農業高橋良彰さん(58)は「昔は除雪も十分ではなかったので、冬になると閉ざされて町中心部や他地区に行くことができなかった」。母親のたけ子さん(80)は「冬の漆曽根は陸の孤島だとよく言われた」と振り返る。
時期は不明だが、昔から冬の生活を確保するために、住民は協力し合って雪が降り始めると、高橋さん宅のすぐ裏の河川敷から対岸に木製の橋を架けた。全長は約30メートル、幅は約0.9メートル。砂袋で足場を固定し、杭を打ち床面の木板を並べ、手すりのロープを張った。「冬橋(ふゆばし)」と呼び、3月末になると取り外した。冬橋は1991年ごろまで存在したという。
近くの農業高橋甫さん(66)は「稲刈りが終わり、神社の雪囲いが始まると同時に橋づくりに取りかかった。晩秋の恒例行事だった」と感慨深そうに語る。
そねた橋は国道345号の整備によって95年10月に完成。良彰さんは「雪の吹きだまりで車が家に入れず、近くに止めて歩いて帰宅することもしばしばあった。そねた橋の開通で安心してどこに行くのも便利になった」と話す。
橋名は公募によって決まった。「濁らずにいつまでも清流の川であってほしい」との願いを込めて、あえて「そねたはし」と命名された。
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