上山市の泉川地区に「泉川大橋」(全長六十メートル、幅四・九メートル)が架かる。場所は上山中心部を流れる前川との合流地点で、前川に架かる泉川橋とは、二つの川の間のわずかな土地を挟んで一本の道路でつながっている。現在の泉川大橋は二代目で、一九七五(昭和五十)年の完成。橋の近くの道路沿いには、洪水がなくなるように住民が祈って立てた石碑が六つ並んでおり、往時の苦難を物語る。
前上山市観光協会会長の枝松寛さん(79)=同市泉川=によると、泉川地区は昭和初期まで洪水地帯だった。須川と前川の合流地点とあって豪雨になると一気に増水するため、田畑は冠水し近くの民家も浸水して大きな被害が出た。一九四一(昭和十六)年には未曾有の大洪水が発生。枝松さんは「あの時は川から離れた田んぼにコイがいっぱいたまっていた。ものすごい勢いで水があふれてきたのだと思う」と振り返る。度重なる洪水を恐れ「水神」などと刻んだ石碑を川沿いに立てた。五二年から五三年にかけて河川改修工事が行われ、堤防が築かれ川底も下げられた。以後、洪水被害はほとんどなくなったという。
橋と平行して歩道橋も架けられており、朝夕はのどかな雰囲気の中、近くの上山北中や上山明新館高の生徒たちが渡っていく。須川では昔も今もドジョウがよく捕れる。枝松さんは十五年ほど前から毎年、五月から九月にかけて人を集めてドジョウ汁を味わい、楽しいひとときを過ごしている。「食わず嫌いが多いけど、一回食べるとだれでも好きになる」と枝松さん。洪水を語った時の厳しい表情に笑顔が戻った。
|
|