西川橋(長さ八八・八メートル、幅一二メートル)は西川町の海味と吉川の両地区を結ぶ。橋の上下流一帯の寒河江川は一九九二年のべにばな国体でカヌー競技スラローム・ワイルドウオーターの会場になった。橋はその前年の九一年八月に完成した。
右岸の橋のたもとには現在、西川中が立っている。その敷地には一九二〇(大正九)年創立の製糸会社があった。二六年に、それまであった橋から本格的な木橋に架け替えられ、製糸会社の工場に通う女性工員を含め多くの企業関係者の往来があったという。三八年に永久橋に架け替えられたものの、四一年に洪水のため南半分が流失。復旧の上、利用してきたが、吉川地区への企業進出や大型車の通行が増加するなどしたため、現在の橋が架けられた。べにばな国体のカヌー競技場整備と並行して現在の橋の建設は進められた。
西川橋を間近に臨む海味地区で金物雑貨店を営む菅野哲治さん(83)は八九年、昔の子どもの遊びを懐かしく思い出しながら描いた画集「みちのく西川子ども歳時記」を刊行した。季節ごとに趣深い場面をとらえており、夏の川での水浴び、甲ら干し、カジカつきなど、川がまさに身近にあったことを物語っている。
「かつては(山形交通三山線の)海味駅と製糸会社を結び、西川橋は多くの人と物資が行き来していた。今は登下校する中学生にとって欠かせない橋になっている」と菅野さんは橋の往来と川の変遷に思いを巡らせていた。
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