米沢市の花沢町や駅前地区と桜木町を松川橋が結ぶ。古来、松川(最上川)の東側から城下町への入り口として、重要な役割を果たしてきた。
一八五二(嘉永五)年、東北を旅した幕末の志士・吉田松陰は、米沢の城下に入った際、松川橋を渡ったという。
一九三三(昭和八)年、車道だけの永久橋が完成。七〇年に片側へ歩道が増設され、現在の姿になった。長さは約百二十メートル、幅は車道部分が五・三メートル、歩道部分が一・五メートル。
橋のそばに立つ和洋菓子店「富田屋」二代目の渡部洋二さん(71)は「永久橋が架かる前は、丸太を三本ほどつなぎ合わせただけの簡単な橋で、川が増水するたびに流されたそうだ」と、父親からよく聞いたという話を教えてくれた。
下流に花沢大橋が完成する九〇年までの松川橋は、高畠町や同市上郷方面と市中心部を結ぶ主要ルートだった。現在も多くの車や人が行き交う。
夏恒例の花火大会が松川河川敷で開催されているが、かつては松川橋付近が会場で、当日は周辺にずらりと露店が並び、橋で仕掛け花火も行われたという。渡部さんの妻さち子さん(70)は「花火大会の日は店が忙しくて、こんなに近くにいるのに花火を見る暇もなかった」と懐かしむ。
映画「スウィングガールズ」で、女子生徒が一人橋の下でトランペットの練習に励むシーンがあるが、その場所がこの松川橋だ。
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