山形市の北西部、馬見ケ崎川の最下流域に架かる「白川橋」は、渋江と成安の両集落にまたがる。現在の橋(長さ百五十メートル)は四代目で一九九〇年に完成した。馬見ケ崎川は古来、村山高瀬川との合流点から下流は清らかな流れの意味を込めて「白川」とも呼ばれ、それが橋の名に。付近は野鳥が飛び交い、晴れた日は上流方向に蔵王連峰、下流方向に月山が遠望できる。
渋江に住む庄司佐悦さん(79)と小林信広さん(80)によれば、昭和の半ばまで渋江と成安は犬猿の仲だった。両集落は川を境界線としたが、洪水のたびに川が大きく蛇行し、川沿いの田畑の境界があいまいになり土地を巡って対立。庄司さんは「住民が総決起して衝突しかけたこともあり、おっかなくて橋を渡って成安の方には行けなかった。成安の住民も同じだったと思う。両集落の縁組は一切なかった」と話す。
だが、今ではそれも過去の笑い話。二〇〇三年、白川橋から一キロ下流の渋江側の堤防沿いに、渋江を含む明治地区、成安を含む大郷地区の住民らが桜を植樹し「白川桜公園」を整備。庄司さんが会長を務める「明治地区桜を親しむ会」が毎年開く観桜会では、和気あいあいと交流している。成安に住む長岡司さん(70)によれば、成安側の河川敷にも桜公園を整備する計画が進行中で、「渋江と成安は昔はけんかもしたが、今は大切な仲間同士。子どもたちのために、公園整備など多方面で協力し合い地域づくりを行っている」と話す。双方の住民は橋を行き交い、がっちりとスクラムを組んでいる。
|
|