やまがた橋物語

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赤川編第2部[5]

◆向山橋(鶴岡)

向山橋(鶴岡)の写真 鶴岡市砂川の山崎集落の東端にひっそりと架かっているつり橋「向山橋」=鶴岡市

 鶴岡市砂川の山崎集落を東に進むと、つり橋の「向山橋」(全長約三十九メートル、幅一・八メートル)が見えてくる。その先には、うっそうとした山林。橋はさながら、非日常の空間への入り口のようだ。

 つり橋といっても鋼製で、揺れはそれほど大きくない。二〇〇一年に架け替えられるまではロープと板による橋で、冬の「雪下ろし」は住民たちの仕事だった。架け替えの後、冬季間は取り外されるようになり、そんな苦労もなくなった。

 住民によると、かつて橋の東側の向山地区には田畑が広がり、農作業に行く人の通り道だった。田畑がほぼ姿を消した現在は、橋の利用者の大半が山菜採りに向かう人だ。ワラビ、クリ、トチなどのシーズンには、多くの人が行き来する。

 「木の橋は揺れがひどかった」と主婦伊藤文子さん(60)。橋のたもとにある現在の家に嫁いだのは約四十年前だ。当時はかやぶき屋根が中心で、橋を渡り、カヤを刈ってくるのが伊藤さんの仕事だった。「帰り道はカヤをたくさん背負って渡った。つり橋が余計に揺れて怖かったのを覚えてるよ」と懐かしそうに振り返った。

 近くに住む主婦菅原ミエ子さん(65)は長年、橋を渡って山菜採りに出掛けている。近年は人間以外の利用者がいるのだと菅原さん。「柿を目当てに、五、六十匹のサルが渡ってくるの。人間よりもサルの方が橋を大事に思っているかもね」と笑った。

 橋の下は、まだ川幅が狭い赤川。付近に人工物は見当たらず、深緑の中、ゆったりとした流れをたたえている。

2008/09/05掲載
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