鶴岡市の山形自動車道庄内あさひインターチェンジに近く、赤川に架かる県道鶴岡村上線の「東橋(あずまばし)」。今年一月二十五日に開通した新橋の隣には、解体工事に入る旧橋が並ぶ。真新しい橋と、役目を終え二〇〇九年三月末までには姿を消す橋。新旧交代が目に見えて着実に進む。
県が約百五十メートルの東橋の架け替え区間を含む延長四百五十メートルを整備した。道幅は十三メートルで、片側に三・五メートルの歩道を備える。旧朝日村に架かる東橋は、合併効果で当初予定より一年前倒しして整備された。橋の名称は、旧村を構成した、かつての東村に由来するという。
一九三二(昭和七)年に完成した旧橋は歩道がない上、老朽化が進み、新しい橋への架け替えを望む地元の声は以前から多かった。東橋の両岸に氏子が暮らす八桑神社の宮司宮崎武さん(84)は今年一月の開通に伴う安全祈願祭で斎主を務めた。宮崎さんの祖父も旧橋の渡り初めに際して斎主として神事を行った。あれから七十年以上の歳月が流れた。「二代目の鉄橋がようやく完成したというのが率直な感想」と感慨深げに語る。
〇四年夏、東橋近くの赤川流域で、映画「蝉(せみ)しぐれ」(藤沢周平原作、黒土三男監督)の一シーンの撮影が行われた。普段は、静かな集落にロケ班の車両などが列をつくり、見物客が多く集まった。宮崎さんは撮影時のにぎわいに触れながら、東橋の歴史に思いをはせ「(旧橋以前は)つり橋だった。風が吹くたびに揺れてとても怖かった記憶がある。今、その名残はない。歴史を知る人はだんだんいなくなる」と静かに話した。
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