川底までコンクリートで固められた3面護岸の河川、木々や山の斜面を削り取るダム建設。コンクリートによる治水は、自然保護の観点からは「悪」の印象が根強いが、近年の豪雨でその効果があらためて見直されている面もある。
昨年、今年と県内で続いた豪雨で、河川改修による治水の効果が顕著に表れた例がある。高畠町の屋代川だ。
屋代川は1967(昭和42)年の羽越水害で氾濫し、川沿いの集落、農地に甚大な浸水被害が発生した。このため、県などが70年に河川改修に着手。川幅を広げたり、川底を掘り下げたりした上で堤防が築かれ、流下能力は1秒当たり80立方メートルから同300立方メートルにまで改善した。
昨年の豪雨時の水量は毎秒140立方メートル、今年が180立方メートルとされる。改修が行われていなければ、隣接する南陽市の吉野川と同様の被害があったと推測されるが、2年とも被害はほとんどなかった。
一方、対策が今後本格化する予定だったのが吉野川。屋代川とは対照的に、護岸の崩壊、越水、橋の破損と流出、土砂流出など甚大な被害が出た。
ダムも洪水調整の機能を発揮した。国土交通省によると、置賜野川上流にある長井ダム(長井市)は今年7月の豪雨時、約211万立方メートルの水をためた。これで、長井市谷地では置賜野川の水深が約1.3メートル下がったと推計される。県河川課によると、上山市の前川ダムは約212万立方メートルの水をため、同市北町の前川で約46センチ水位を下げたという。
豪雨の回数が増え、河川改修やダム建設といった治水対策の重要性が高まっても、厳しい財政事情で治水関係予算は年々減少しているという現実がある。県河川課によると、ピーク時の93年に460億円あった県の治水関係予算は、2014年度当初予算では、約8分の1の61億7200万円にまで減少した。
護岸の維持修繕、支障木や土砂の撤去といった施設の維持管理にも多くの費用がかかる。14年度当初予算の治水関係予算のうち、維持管理費の割合は19.5%を占める。増大する豪雨災害のリスクに整備費用が追い付かない構図が浮かび上がる。
東北大大学院の風間聡教授(土木工学専攻)は「厳しい財政や人口減少の中で全てを防ぐことは無理。コンパクトシティー化や土地利用制限を積極的に行い、守るべき場所を明確にするべきだ」とし、縦割りを廃した行政展開で効率的な治水対策を行っていく必要性を指摘する。
県内では、最上町の赤倉温泉上流に建設予定の最上小国川ダムの動向に注目が集まっている。県内有数の氾濫河川で対策が急務だが、事業主体の県と、地元の小国川漁協がアユの生態への影響をめぐり、河川改修か穴あきダム建設か、治水の手法で対立。事業着手から20年近くが経過した。28日に漁協が臨時総代会を開き、着工容認の可否が諮られることになっている。
崩壊した吉野川の白山在家橋。治水対策の進捗(しんちょく)状況が被害の大きさを分けた=南陽市金山、今年7月10日